Internet Explorer: ももクロ成功の秘訣 優れたITサービスは、先駆者のコピー&クローン?

2013年5月21日火曜日

ももクロ成功の秘訣 優れたITサービスは、先駆者のコピー&クローン?


「ももいろクローバーZ オフィシャルサイト」より
現 在のソーシャル × モバイル化へと続くWeb2.0時代の到来をいち早く提言、IT業界の
現在のソーシャル × モバイル化へと続くWeb2.0時代の到来をいち早く提言、IT業界のみならず、多くのビジネスパーソンの支持を集めているシリアルアントレプレナー・小 川浩氏。『ソーシャルメディアマーケティング』『ネットベンチャーで生きていく君へ』などの著書もある“ヴィジョナリー”小川氏が、IT、ベンチャー、そ してビジネスの“Real”をお届けする。

『コピーキャット: 模倣者こそがイノベーションを起こす』(オーデッド シェンカー/東洋経済新報社)というビジネス書が話題になっている。

 内容は、ある意味当たり前のことを言ってい る。良いビジネス書とは、当たり前のことをそうでないように書いた本のことだ。その意味で、この本は成功している。

  本書が説くところを簡単に書くと、ゼロから革新的な何かを生み出す(イノベーション)と、それを行う人や企業(=イノベーター)の成功確率は実は驚くほど 低く、参入市場において大きな果実を手にすることができるのは、優れたアイデアのコピー(イミテーション)を作り、より的確なクローン製品に仕上げる模倣 者(コピーキャット)のほうであるという内容だ。一言でいうなら、換骨奪胎こそビジネスの要諦だということだ。

 も ちろん、ただ真似ればいいという粗悪なコピーを量産しても駄目だ。クローン技術が理論的には可能でも、本来のDNAが持つ資質や能力、健康状態や寿命など を完璧に再現することが難しいように、実は誰かのアイデアを細密にコピーすることは非常に難しい。

 このビジネス書 では、イモネーター(イミテーションをする人という意味のイミテーターとイノベーターを掛け合わせた造語)を目指せと言う。タイトルであるコピーキャット とは、日本語で言えば猿真似と訳せるかもしれないが、同じく相当に嘲りを込めた言葉だ。タイトルをイモネーターとせずにセンセーショナルなコピーキャット としたところは、ややあざといかもしれない。

 イモネーターは誰かが考えたアイデアをパクリ、その後でさまざまな工 夫を加え、余計なモノは削り、磨きをかけていく。ある意味オリジナルより良いモノでなければならない。オリジナルのアイデアや製品に付け足すだけでなく、 削らなければならない。単にコピーすればいいというものではないのである。

 僕は前回のコラムで、「ハイコンセプト は斬新でなければならない、ということはない。流行廃りはあるし、タイミングというものもある。例えば、古い例で恐縮だが『ジョーズ』は人食いザメがリ ゾート地を恐怖に陥れるというスリラーだが、その後人食い熊がキャンプ地を恐怖に陥れる映画『グリズリー』が登場し、それなりに受けた。『グリズリー』の ハイコンセプトは、“熊版のジョーズ”になる。つまり、市場がある、観客が喜ぶと実証されたハイコンセプトを真似る、クローン映画はある程度の売上の計算 が成り立つわけだ」と書いた。つまり『グリズリー』は良いクローンだったが、その他のまがい物は単なるフェイクだったわけだ。

● ネット業界でもクローンは良い事業モデル

 ネット業界では、優れたクローンがたくさんある。ヤフオクはeBayのク ローンだし、AndroidとGoogle PlayはiPhoneとApp Storeのクローンだ。GREEだってモバゲーの優れたクローンと言える。良いアイデアを発見し、そのクローンをつくることは良い事業モデルであり、何 も恥じることのない真っ当なやり方だ(真似られたほうは気分が悪いかもしれないが)。

 ドイツのロケットインター ネットという会社は、世界中の新興企業や新サービスをウォッチして、良いと思ったら即座にクローンをつくり、そのクローン企業をオリジナル企業に売るとい う事業をやって大成功している(そのかわり訴訟リスクを常に抱えているが)。日本のスタートアップ(ベンチャー企業)だって、コイニーはスクエアのクロー ンだし、僕のリボルバーもBackplane(レディー・ガガのLittleMonstersを運営)のクローンであると言えないことはない。

  僕が思うに、今一番わかりやすいクローンは、ももいろクローバーZかもしれない。彼女たちはそもそもはAKB48のコピーとして、「会いにいけるアイド ル」というハイコンセプトから、「週末ヒロイン」=週末だけ会いにいけるアイドルというハイコンセプトをひねり出した。その後、よりカジュアルでよりアニ メ的、非常に早いテンポで転調する楽曲と切れのいいアクロバティックなダンスを組み合わせることで、本家を凌ぐ人気を手に入れた。彼女たちはAKBのコ ピーキャットから始めて、オリジナルがなんであるかを忘れるくらい“転調”を繰り返した結果、もはや自身がオリジナルであると言っていいポジションを得た のである。

 粗悪コピーをつくるのは簡単だが、本物以上のクローンをつくるのは技術がいる。そして、その技術に加え て何度でもコピーを重ねて練度と鮮度を高めていくための情熱がなければ、最高のクローンはつくれない。

 スタートアップを起こす際にも、誰もいない市場を狙うよりは、誰かが切り拓いてくれた市場を探し、その市場の先駆者(オリジナル)を超えるクローンをつ くることが最良の選択肢かもしれない。市場のパイオニアとは、最初に進出した者ではなく、最初に成功した者にこそ与えられる称号だ。そして、同時に消費者 の記憶とは、常に上書きされるものなのである。
(文=小川浩/シリアルアントレプレナー)


●小川浩(おがわ・ひろ) 
シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使 える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。


0 件のコメント :

コメントを投稿