父と娘の週末トーク:娘と父のマジトーク(その9)「スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式辞を見て、生きる意味を考えた」
中学生の娘と本気で話し合うシリーズ、今回のテーマは「人間の生きる意味」。娘のリクエストでこのテーマにしたのですが、わが娘ながら、素直にすごいとほめてあげたい考えを持っていたのでした。
父と娘が1つのテーマに沿ってガチで話し合う本企画、残す所あと2回となりました。今回のテーマは、娘のリクエストで「人間の生きる意味」について。
これまでさまざまなテーマで話し合いましたが、今回が最も盛り上がりました。女子中学生らしからぬ若干重た目なテーマですが、今回と最終回の2回にわたりお付き合いください。
今回は、朝のガストで話し合いました。
担任の先生の答えは、納得できない
父: 最近「人間の生きる意味」を考えているらしいけど、いつから?
娘: お父さんが『手紙屋 蛍雪篇~私の受験勉強を変えた十通の手紙~』って小説を読ませてくれた辺りだから、去年の夏だね。
父: 今も小説は書いてるの?
娘: もうすぐ二作目を書き終わるところ。三作目は、人間の生きる意味をテーマにするから、2人で話したいなって思ってた。
父: それにしても、重いというか何というか……女子中学生らしくないテーマ設定だな。
娘: 私も、どうしてこのことが気になるのか、よく分からないんだ。
父: 「人間の生きる意味」を考えてみて、何か分かったの?
娘: 考えたけど、行き詰まったから、学校の先生に聞いてみた。先生と各生徒が毎日やりとりする交換日記的なノートがあって、その日の出来事とか、困ったことがあったら書くことになってるのね。そこに、「人間の生きる意味って何ですか?」って書いてみたの。あと、「人間はなぜ死を恐れるのですか?」とも。
父: 担任の先生からは、どんな答えが返ってきた?
娘: 「人間の生きる意味は、人生を楽しむためです」だって。
父: 死のほうは?
娘: 「人間が死を恐れるのは、自分の存在が世界からなくなってしまうからです」だって。
父: そっか……。で、納得できた?
娘: いや、できなかった。理解はできるけど、フツーっていうか、それだけじゃないんじゃないかなって。だから、塾のM先生にも聞いてみたの。
塾の先生の答えも、しっくりこない
父: 塾の先生は、違う視点から意見をくれた?
娘: M先生によれば、「人間が生きている意味を探すため」なんだって。
父: ほほう。
娘: クラス中が、「おおっ」ってどよめいたよ、お父さんはどう思う?
父: なんだか、質問をそのまま返されたようで禅問答みたいだね。面白い考えだとは思うけど、生きている意味を探すのが、生きる意味……でいいのかな。
娘: えー、違うの?
父: お父さんだって、正解は知らないよ(笑)。M先生の言う「意味を探す」ってのは、大切なことと理解できる。でも、探すこと、あるいは見つけることそのものが生きる意味なのかっていうと、なんかしっくりこないな。
娘: 私も、他の生徒も、その場では感激してたんだけどな。
父: じゃあ、M先生の答えには納得できる?
娘: そー言われるとちょっと……。間違ってはいないだろうけど、別の答えもありそうな気がする。
父: お父さんも、そう思うんだ。
我が娘ながら、素直にすごいとほめてあげたい回答
娘: じゃあ、お父さんの考えを教えて。
父: その前に、サオリ自身が導いた考えを聞かせてよ。
娘: えっ! ……い、言わなきゃならない?
父: そりゃそうだよ。自分の考えは、当然あるんだよね? さあ、話してよ。
娘: (ひと呼吸置いて、ゆっくりと)人間はさ、これまで長い歴史があるじゃない? ネアンデルタール人とかがいて、原始時代があって、石器時代とか。日本では縄文、弥生時代があって、飛鳥、奈良時代、平安、鎌倉、室町時代……で、今があるわけでしょ。
父: うん。
娘: 人間が今まで生き残り続けてこられたのは、過去の人たちのおかげなんだよね。戦争や争いは何度もあったけど、仲直りしたり、反省したり、少なくとも絶滅するまでは殺し合わなかった。
父: 戦争はいまだに起きているけど、少なくとも歴史上ではすごく減ったとはいえるよね。
娘: でしょ、今があるのは、祖先の努力の結果なんだよね。
父: 確かに。
娘: だから、私も今の平成の時代じゃなくって、未来の世界の……役に立つっていうか……。
父: 発展とか、貢献?
娘: そう、貢献! 私は、未来に貢献したい。自分が未来の人のための役に立つよう、今を頑張ることが、私の生きる意味なんじゃないかっていう考えにたどり着いたの。
父: うん(目で、「もっと話して」と促す)。
娘: 人間って、歴史上ずっと戦争を繰り返しているでしょ? 戦争をゼロにすることは難しいけど、新しい知識とかアイデアを人に伝えていくことで、戦争を減らせるかもしれないじゃない。
父: いいね、どんなことができる?
娘: 学んだ知識を本にしたり、スピーチしたりして、戦争をしている人たちの心を変えていけたら、すごいことになると思うんだ。もしも世界で起きている戦争を3分の1に減らせたら、絶対に今よりいい世界になる。
父: うんうん、そうだね。
娘: 国同士の争いって、どっちが悪いのか、そもそもどうして戦っているのか、私もよく分かんない。でも、完全な正義ってないって思ってて、どっちもどっちな気がするんだよ。
父: 戦争って、そんなもんだよね。お互いが、自分こそが正しいって思い込んでるよね。
娘: 人間が争う生き物ってのは本能だし、それはこれからも変えられない。人間は、これからもあちこちでケンカをする。でも常に減らしていく努力はできるし、するべきなんだ。
父: なるほど。
娘: 戦争の直後はきっと食べ物がなくて、建物が壊されて、社会を立て直して行くのが大変。みじめな気持ちになるかもしれない。でも戦争が続いているよりかは、ずっとマシだよ。戦争の話は例えだけど、そういうことができる人間になるために私は勉強するべきなんじゃないかって。
父: ……。
娘: だから、そういう生き方を私はしたいなって……。ねえ、聞いてる?
父: (じーんと感動して)お前、よくそこまで考えたな……。尊敬するよ。
娘: えへへへ、照れるな。
父: てっきり、抽象的な言葉で、自分の幸せだけを言うんじゃないかと予想してたから。
娘: ひどーい。
父: 「自分が幸せになるため」とか「結婚していい奥さんになって、リッチな生活を」みたいな自分本位な希望か、あるいは「毎日を一生懸命生きて、周りの人に感謝するため」みたいな、いいこと言ってるようで、実は中身のない薄っぺらなことを言うんだとばかり。
娘: 私だって、時間かけてこの考えになったんだよ。
父: 利他的かつ、未来思考ってのは、我が娘ながら素直にすごいってほめてあげたい。
娘: 利他的って?
父: 自分の損失を顧みずに、他者の利益を図るような行動のことだよ。
スティーブ・ジョブズの、スタンフォード大学卒業式辞を一緒に見た
父: サオリの考えと、ちょっと関係するかもしれない動画を見てほしい。
娘: どんな?
父: スティーブ・ジョブズっていう人のスピーチなんだけど。
娘: 知ってる! ピクサーを立ち上げたり、iPhoneとかリンゴマークのパソコンを作った人だよね。
父: 2005年にスタンフォード大学の卒業式でやった有名なスピーチで、YouTube上では何千万回も再生されているんだ。
娘: へええ。スタンフォード大学って、超頭がいい人しか行けない世界トップ級の大学なんだよね。
父: そう、じゃあ見てみようか。字幕に追い付けなかったら、所々で再生を止めて、補足説明するね。
スティーブ・ジョブズ スタンフォード大学卒業式辞 日本語字幕版
父: 3つの話のうち、どれが印象的だった?
娘: 「点と点をつなぐ」ってお話。
父: ふむふむ。
娘: 今、私が毎日やってること、学校や部活や塾がほとんどだけど、そこでやってることが、いつどんなときに役に立つか分からないんだよね。
父: 因数分解とか化学式って、一見すると意味ないって思うとき、あるよね。
娘: そうなの。スティーブ・ジョブズは、カリグラフィー……だっけ? を勉強したことが、何年か後にパソコンを作るときに役立ったわけじゃない?
父: うん。
娘: だから私も、自分のしていることを、役に立つかどうかで判断しちゃダメなのかなって。
父: いちいち意味や価値について悩んでも、仕方ないってこと?
娘: うん、クヨクヨ悩んで失敗するのはもったいない。それに、線としてつながらなくても、やったことは経験になるからムダにはならないはず。
父: サオリは今は小説と絵が好きだけど、将来、小説家にも画家にもならないかもしれない。
娘: それでもかまわないよ。だって私は、自分の言葉とか物語を人に伝えて感動してほしいから書いたり、描いてるの。何のためとか、お金になるかもとか、考えたことはない。
父: 現時点で将来を見通して点と点をつなぐことはできないって話だけど、未来が不確かなまま突っ走るのって、精神的にきつくない?
娘: そりゃ、そう感じることもあるよ。でも行動しないと、何も始まらないでしょ。
父: 行動?
娘: 塾の先生に言われた言葉で、「人に差をつけたいなら、人より先に行動しろ」ってのがあるの。
父: へえ。
娘: 期末テストのときとか、普通の人が1週間前から準備するところを、私は2週間前から準備しちゃおうって。先に動けば、その分たくさん行動できるし。
父: なるほど、いい考え方だね。
娘: で、「生きる意味について」のお父さんの考えはまだ?
父: それは、次回話すことにするよ。
まとめ
娘の要望で決めたテーマだったので何かしら言いたいことをまとめているのだろうとは思っていましたが、意外にしっかりと考えていたようで、驚かされました。私が13歳だったころは、何を考えていただろう……。生きる意味の代わりに、いやらしーいことばかり考えていました(詳細はとても書けません)。まったくもって、赤面モノです。
次回はついに最終回。引き続き、「人間の生きる意味」について話し合います。
[父と娘の週末トーク]
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