父と娘の週末トーク:女子中学生と父のマジトーク 「お父さん、アタシ告白されたんだ」
「娘が最近冷たい」「態度がよそよそしい」そんな悩みを抱えた、年頃のお嬢さんを持つお父さんは少なくないのでは? もしも、女子中学生と父親がちょっと話しにくいテーマについて深く語りあったら……を実現してみました。
私には、中学生の娘がいます。今風にいうとJC(女子中学生)です。部活は美術。趣味は小説を書くこと。運動よりはインドアを好む女の子です。娘も中学生になると、容姿に気を使い出したり、女性特有の丸みを帯びた体形に変化したり……と小学生時代の幼さが消え、急に大人びてきます。
父につれない素振りを見せ始めるのもこのころ。われわれ親子間でも、会話の量が減っていました。会話もこちらからの一方通行メインで、なんだか空回りしているかんじ。
「年頃のJC(&JK:女子高校生)」にとって、うざい存在ナンバーワンは父親なのだ。他の家庭もきっと似たり寄ったりなはずだ。オレが悪いわけじゃないさ……」と、自分に言い聞かせていました。
ところが、ある出来事をキッカケに私と娘の心がガッチリかみ合い、会話が復活したのです。それ以来、今までしたことのなかった本音トークができるようになりました。
「お父さん、アタシ告白されたんだ」
「お父さん、アタシ告白されたんだ」
まず、キッカケから話します。
9月のある日曜の晩、「アイスが食べたい」と娘がねだってきました。近所のコンビニに二人で歩いていると、娘がおもむろに「……あのね、このことは誰にも言わないでほしいんだけど。特にお母さんにはぜったいナイショでいてほしいんだけど……」と神妙な顔つきで話しかけてきました。
(ははあ、アイス以上に高価なモノを買ってほしいんだな? 服か? カバンか? スマホか?)
と思いましたが、ソワソワした素振りを見せ、落ち着きがなく、いつもと雰囲気が違います。
「なになに?」とたずねても、「ほんとにお母さんに言わないって約束する?」と念の入れ方がハンパありません。
10分ほど押し問答を続けたでしょうか。「お母さんには言わないって約束する! 早く言ってくれないと、アイスが溶けちゃうよ」とキレ気味に急かすと、娘は意を決したようにつぶやきました。
「お父さん、アタシ告白されたんだ」
これを聞いた瞬間、うれしさと寂しさの入り混じった、複雑な気持ちになりました。年頃の娘をお持ちの男性親はウンウンと頷いてくれるでしょう。と同時に「なぜこんな重い(マジな)ことを、父に話す気になったのか? ふつう、絶対に打ち明けない相手ではないか?」と疑問に思ったのです。でも、娘は真剣に考えた末、私を相談相手に選んだのです。私は、娘の思いに真剣に向き合う義務があります。
その瞬間、ひらめいたのです。
「これを、連載コンテンツにしたら面白いかも」と。
娘のプライバシーをWebコンテンツにするというのは、父親としてどうなんだと一瞬悩みましたが、「面白そう」という気持ちが勝りました。そこで、連載企画をまとめて娘に提案し、(匿名前提で)承諾を得ることができたのです。さらには、告白をキッカケに、普段はあらためて話さないことまでも、あえて話してみようと合意を得ることに成功しました。
「何を話したのか」「どんな発見や気付きがあったのか」
既に父親の読者、これから父親になる読者などの、親子間のコミュニケーションの参考になれば幸いです。
で、詳細は?
さて、話し合いをするに当たり、最も気を使ったのは「場所」でした。周囲に気兼ねなく落ち着いて話せる場所としてカフェがいいと考え、スペースに余裕のある郊外のコメダ(コメダ珈琲)をチョイスしました。ちなみに、時間は土曜の朝。
コメダで、モーニングを食べながら話すことになりました。
父 サオリ(仮名)はどうしてお母さんではなく、お父さんに打ち明けてくれたの?
娘 だって、お母さんってすぐ感情的になるでしょ? 冷静にあたしの話を聞かずに、キーキーわめいたり、問い詰めたりするに決まってるもん。
父 そう予想したんだ。
娘 うん、命令されるのってイヤなの。あたしのことはあたし自身で決めたい。あ、べつに告白されたからって付き合うつもりはないよ。ただ、どうするかは自分で決めたい。
父 お父さんは感情的にならないって思った?
娘 お父さんは……冷静に聞いてくれるって思ったし、命令じゃなくて、提案してくれるんじゃないかなって。お母さんに話せることは、学校の出来事とか、勉強のこととか、そういうことまで、かな。恋愛については、たぶん相談しない。
(う、うれしい……。でも、それを顔に出すわけにはいかない。務めて冷静を装う)
父 そ、そうか。ちょっと聞きたいんだけど、その男の子ってどんな子?
娘 クラスで一番うるさい。よく言えば、あかるくてひょうきんな子。よくしゃべるし。
父 ムードメーカー的な?
娘 そうだね、笑いも取るし、まあ、好かれているキャラではあるよ。
父 お笑い芸人っぽいんだね。
娘 そう、そんな感じ。
父 イケメン?
娘 ううん。
父 で、どんなふうに告白されたの? 人気のない体育館に呼び出されたとか?
娘 教室で掃除の時間に一緒に机を運んでいるときに、小声でボソッと……。
父 ややカジュアルな感じだね。で、サオリはその子のこと、どう思ってるの?
娘 あたしは何とも思ってない。ただの友達。
(よかった……両想いでなくて……)
父 告白された瞬間、どう思った?
娘 そりゃあ……うれしいって気持ちはあったけど、でもそういう(恋愛)感情はないから……。
父 じゃあどうするの? 向こうは回答、待っているんじゃないの?
娘 NOって言うよ。希望を持たれたくないから、きちんと断るつもり。どっちつかずの迷ったふうにはしない。
父 そか、でも断り方も気を付けないといけないよ。最近はストーカー事件があったりするし、こないだは女子高生が殺される事件だってあったんだから。傷つけるような断り方は、ダメだよ。その男の子だって、きっと勇気を出して告白したはずだから。
娘 そうだね、何て言うのがいいのかな……例えば「他に好きな人がいる」ってウソをつくとか? まあ、考えとく」
(大丈夫かな、、変な振り方とかしないかな……)
父 ところで、サオリはどんな男性が好みなの? 付き合う、付き合わないの境界線って何なのかなーって。
娘 いろいろあるよ。ルックスより、性格が大事。「差別しない」「誰に対しても平等」「プラス思考」「困難があったとき、励ましてくれたり、立ち向かう人」とか。
父 もうちょっと具体的に。
娘 例えば、男の先生で、男子には厳しいのに、女子には甘い人っているの。こっちはちやほやされてラクだけど、性別で扱いを変える人なんだなーって内心思ってる。そういう人は信用できないからヤダ。あと、学校でちょっとしたトラブルってあるじゃない? こないだ、教室の窓ガラスが割れたんだけど、大体男子は、アタフタして何もできないタイプか、ふざけて大声出すタイプばっかり。冷静に考えたり、行動する男子はいなかった。そういうので性格って見えてくるよね。女子って、男性のそーゆーとこ見てるよ。
(こいつ、まじめか……さては、父親の前で格好付けようとしてるな?)
父 じゃあさ、ルックスはどんな人がいい?芸能人やお笑い芸人でいうと?
娘 うーーー、特にいないよ。
父 ルーキーズのドラマの安仁屋(市原隼人)が小学生のころは好きだったよね?
娘 そうだね、カッコイイって思ってたな。今は別に。あたし、カッコイイ人でなきゃヤダとかないよ。フツーでいいよ。
父 そのフツーってのが、どのへんか知りたいんだよ。じゃあ、お笑い芸人で聞くけど……そうだな、サンドイッチマンは?
娘 どっちもちょっと……。
父 出川哲朗は?
娘 (即答で)ヤダ。
父 フットボールアワーの岩尾は?
娘 イ、イヤかな……。
父 性格が超良くっても?
娘 すごく迷って……断る……てか、なんでブサイク芸人ばっかり挙げるの(笑)。
父 じゃあ、アンジャッシュの渡部は?
娘 全然いいね。小嶋はヤダけど。
父 チュートリアルの徳井は? 大抵の女性は、徳井はイケメンって認めてるぞ。
娘 どっちかって言ったら、カッコイイ方に入るんじゃない? あたしは好きじゃないけど。
(何だ、イケメンが好きなんじゃん……全然フツーじゃないじゃん……。これだから女子の言うフツーって当てにならない)
父 今、好きは人はいないんだよね?
娘 うん。
父 じゃあ、今後誰かを好きになったとして、お父さんに話してくれる?
娘 わざわざ言うことはないからね。「ねえねえ、おとうさん! あたし好きな人ができたよ」って変じゃない(笑)?
父 そりゃそうだ(苦笑)。
娘 雰囲気というか、話の流れになったら言うよ。少なくとも嘘はつかない。そーゆーのって結局バレるから。
父 好きな人はいないってことだけど、それに近い人はいないの? ステキだなって思える男性とか。
娘 担任の先生(キッパリ)。
父 (ほう……)ど、どんな人なの?
「ひいきしない人っていうのがまず1つ。さっきも言ったけど、ひいきってするのも、されるのもイヤなもんだよ。担任は、女子にだって、男子と同じように怒ることもあるんだ。女子になれなれしくしないんだよね。でも、それが逆にいいなって。あと、掃除の時間に先生も掃除に加わるんだよ。生徒に命令できるのに、自分から進んでやるのってすごくない? そういう姿を見ているから、すごく信頼できる人だって思ってるよ。
(何か、さっきから優等生っぽい回答ばかりで、本心が見えてこない気がするな)
父 サオリの“自分なりの、男を見極めるポイント(観察する点)”ってある? どんなに性格がステキでルックスもバッチリな人でも、これをする人は許せないってマイナス面で。
娘 (数秒考えて)……タバコ吸う人。
父 タバコ?
娘 あと、お酒飲む人。
父 何で?
娘 だって、保健の授業で習ったけど、タバコって身体に悪いんでしょ? お酒だって、飲み過ぎたらよくないし、飲酒運転とかあるし。何ていうんだろ、身体に悪いって知っていながらそーゆーことをするのって、頭が悪いっていうか。自分の身体を平気で傷つける人は、ダメな人間じゃないかって、子どもなりに思う。自分の身体を大事にしない人は、恋人や奥さんも大切にしないかもって考える(※ちなみに私は、タバコもお酒もやりません。
父 じゃあ、ドラッグとかは……。
娘 タバコ以下だから、クズだよね。あと、ギャンブルを否定はしないけど、やってる人も頭悪いんじゃないかなって思う。そういう人は尊敬できないから、100%好きにならない。やるのはその人の自由だから文句ないけど。
父 もしも担任の先生がタバコ吸ったり、ギャンブラーだったら?
娘 あー、それでもうダメ! 特にタバコ吸ってるって分かったら、どうしたって好きにならない、残念だなー、タバコさえ吸ってなければ彼氏候補なのになーって思って、好きな人リストから外す。
父 (そこまでタバコを毛嫌いしてたとは……)じゃあ、サオリは20歳になってもタバコ吸わない?
娘 吸うわけないじゃん、あんなもの! まあ、お酒はちょっとは飲むかもしれないけどね。たまのご褒美として(笑)。
父 ……オマエ、お父さんが言うのも何だけど、まじめだな……優等生みたいで、面白くないぞ。
娘 フフ(笑)。あたし、学校では優等生で通ってるから。
見ていないようで、しっかり親や周囲の大人を観察している
初めのうち、父と娘で向かい合って話すという設定に娘は緊張していた様子でしたが、徐々にリラックスできたようで終盤はお互い笑顔で話せました。「娘の心が私から離れつつあるのでは?」「嫌われているのでは?」と心配だったので、予想以上に深い話ができて、うれしかったですし、急接近できた気がしました。ただ、本心をさらけ出してはいないかなーという気もしています。
見ていないようで、しっかり親や周囲の大人を観察しているな、観察した上で、態度を決めているのかと驚かされました。知らなかった彼女の一面が垣間見れました。親はなくとも子は育つとは、よく言ったものだなあ……と。
なお、誰にも邪魔されないよう、土曜の朝にコメダのモーニングを食べながら話したのもよかったです。スターバックスも考えましたが、席と席との間が狭くて、気を遣うかなと。コメダはゆったりしたスペースが確保されているので、プライベートな会話に向いています。ふかふかのソファも◯。時間に拘束されないし、口うるさい母親はいないし、据え膳で食事できるし、しっかりと会話したいとき、コメダの土曜のモーニングは最高じゃないでしょうか。
[父と娘の週末トーク]
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