父と娘の週末トーク:娘と父のマジトーク(その4)「人と違うと不安になる」女子中学生のリアル
スタンフォード大学で人気だというオンライン講座「Positive Intelligence」を娘と受講し、その結果を交換して話し合ってみました。そこで見えてきた娘の本心とは……?
あなたは、自分の心の中の「妨害者」のタイプを知っていますか? 自分の弱さを無意識に自覚しつつも、わざわざ文字化したり、意識する機会は少ないでしょう。娘のことは親が1番よく分かっているつもりですが、果たしてそうなのか。
13歳の娘がクラスメイトから告白されたのをキッカケに、娘と父が割と本気で話し合うこの企画、第4回は「Positive Intelligence」というオンラインの診断テスト(英文)をしながら、互いの弱さについて話し合ってみました。
Positive Intelligenceは、オンラインで回答をすると瞬時に結果をPDFで返してくれます。テスト自体はマークシート方式で簡単ですが、単語や言い回しが中学1年生にはやや難しいようだったので、設問を隣で補足説明しながら回答させました。
- 関連リンク:「Positive Intelligence」テストの受け方
- 関連リンク:実際のテストページ
プライベートな質問が多いので、テストは自宅のiPadで、話し合いはコメダ(コメダ珈琲)で行いました。
質問例「まったく同意しない~中立~強く同意する」の5段階
- 自分は「八方美人」だ。
- 気分にむらがあり、よくふさぎ込む。
- 過度に潔癖性だったり完璧主義だったりすることがある。
- 自分の価値は実績で決まると思う。
- ミスをしたとき、そのことで自分を責める。
- 争いごとは本当にいやで、向き合うことを避けがち。
- いつも周りの人よりも心配したり気を揉んだりしている。
- 休んでなどいられない。いつも忙しくしていないといけない。
- 合理的で分析的であることに特別な誇りを持っている。
娘: サオリ(仮名)の結果とお父さんの結果は、みごとに対照的だね。親子なのに、こんなことあるんだ。ちなみにサオリの弱点は、「怖がり」「八方美人」「移り気」の3つだって。
父: お父さんは「理屈屋」「優等生」の2つか。自分の心の弱さがグラフ(数値)と文字で表されるのを見て、どんな気分?
娘: ちょっとドキドキしちゃう。でも、どんな内容なのか気になるね。
父: じゃあサオリのから話そう。「怖がり」についてだけど、思い当たる節はある?
怖がりとは?
説明
- 人生におけるあらゆる危険に極度の不安をもち、最悪の事態ばかり考えている。
特徴
- 常に不安にさいなまれ、いつも自分や他人を疑ってばかりいる。
- 危険の兆候に対して異常に神経質である。
- いつも災難や危険が起こらないかと恐れている。
思考
- 次はどんな災難が襲うのだろうか。
- 失敗したら、ここぞとばかりに攻撃されるのではないか。
娘: 人より心配性な性格だとは思う。失敗したらどうしようとか、人にどう思われちゃうだろうって、考えてしまう癖があるんだ。
父: サオリは保育園のころ、お父さんとお母さんに「人間はいつか死ぬの?」ってよく訊いてきたんだよ。で、「人間はいつか死ぬよ」って答えると、シクシク泣いていた。ほかにも、地震や火事のTVニュースを見ては、悲しそうに泣いてたね。もともと、怖がりだったのかな?
娘: 泣いてた理由は知らないけど、ものすごく先のことまで考えて、取り越し苦労しちゃうってこと、私は多いなあ。
父: 猪突猛進なタイプというよりは、慎重に行動するタイプだよね。でも、じっくり考えること自体は悪いことではないでしょ?
娘: ただ、考えすぎて行動しないときもあるからねえ。
父: それで思い出すのが、10月にあった日経「星新一賞」に応募しなかったことだね。※日経新聞主催の小説コンテストのジュニア部門に、「挑戦したら?」と私が持ちかけていた
娘: もともと応募する気はあったんだよ。ただ、ちょうど中間テストの時期で、時間が全然なかったの。それに、美術部の提出課題の制作締め切りも迫ってたし。
父: うん。超忙しかった時期だったね。ただそれも、もしかしたら行動しなかったことの言い訳かもしれない。
娘: 確かにそうだね……。こないだね、国語の授業で先生がエッセーを読ませて、クラス全体に感想を求めたの。私、手を挙げて発表しようと思ったんだけど、明らかに普通じゃない感想だったから迷ってしまって、結局言えなかった。
父: 「サオリって、変な奴」とクラスメイトに思われるのが、怖かった?
娘: うん。
父: じゃあ、誰でも思い付きそうな平凡な考えを持てたら、安心できるの? あるいは、平凡でありたいの?
娘: (強い口調で)ううん、そうじゃない。人前で発表するのが恥ずかしいって思うときはある。でも、平凡な人間にはなりたくない。他人とは違った、自分らしい意見を持てるようになりたい。
父: 2つの気持ちが、心の中で戦っているかんじ?
娘: まさにそんなかんじ。
父: なるほどね。じゃあ次の「八方美人」に移ろうか。サオリは以前、自分のことを、「学校では、優等生で通ってる」って表現してたよね。それは、まじめでガリ勉っていう意味合いよりも、人の期待に応えたい、人に喜ばれたいって気持ちが強いってことじゃない?
八方美人になってしまう子って?
八方美人とは?
説明
- 人を手伝ったり、喜ばせたり、助けたり、褒めたりなどの間接的な手段で受け入れられよう、愛されようとする。
特徴
- 人に好かれたい思いが強く、愛情を得ようとして人を手伝ったり、喜ばせたり、助けたり、お世辞を言ったりする。
- 他人から受け入れられているか、愛されているかをたえず確かめずにいられない。
- 自分の欲求をオープンかつ率直に表現できない。
思考
- 良い人間になるには、自分より相手の願望を優先しなければならない。
- してあげたことに相手が気が付かないと気になる。
- 人にしてあげるばかりで、自分のことがおろそかになっている。
娘: それはうすうす感じていたんだよね。部活でも授業でも、褒められるとうれしくなって、周りの人をもっと喜ばせようって、ついがんばっちゃうんだ。
父: それ自体は、良いことだよ。程度問題であるというだけで。
娘: 友達との関係でも似たことがあって、不登校の子が学年にいるんだけど、あんまり友達がいないみたいだったの。だから、その子に喜んでもらえればいいなって、私から声をかけて友達になった。私が友達になったことで、だんだん友達が増えたみたい。
父: それは、むしろ素晴らしい。
娘: そっか……、だよね。
父: 人に心配りができることや感謝される行動をするのは、何も悪いことではないよ。ただ、自分の感情を殺してまでやろうとはしなくていいだろうね。サオリのそういう性格、お父さんは好きだよ。
娘: (無言で照れ笑いを浮かべる)
父: サオリって不思議な子でさ、これまで一度も「あれ欲しい」「これ買って」って駄々をこねたことないんだよ。スーパーのお菓子売り場で、お菓子を買ってもらえずにかんしゃく起こす子どもっているでしょ?あの類はおろか、おねだりさえしない。妙に聞き分けがいいというか、子どもらしくない子だったよ。
娘: 6年生の時、塾の送り迎えの途中に「お菓子が食べたい」って思ったときも、ストレートに言えなかった。代わりに「お父さんがイチバン好きなお菓子は何?」って話題を振って、コンビニ寄らない? アピールをしたんだ。でもお父さん気付いてくれなくて、そのことを後で伝えたら、「素直にお菓子欲しいって言えよ! 子どもらしくないな~(笑)」ってお父さんに笑われたもん。
父: あー、あったね。「スナック系だと、カールのうす味が1位で2位がハッピーターン。甘い系だとブルボンのルマンドが1位だけど、ホワイトロリータも捨てがたいんだよな……その時の気分で順位が入れ替わるというか……で、サオリは?」ってトンチンカンな会話を続けてたよね。
娘: 私は心の中で、「まじめに答えてんじゃねーよ、鈍感! 気付けよ!」って思ってた(笑)。
父: 気付けねーよ(笑)。じゃあ次ね、サオリって移り気かな?
移り気とは?
説明
- いつも次はもっと楽しいことがあると期待したり、忙しさに気を紛らわせたりしている。
- 今やっていることに心の安らぎを感じたり、満足したりすることはまずない。
特徴
- 気分が変わりやすく、注意散漫になりがち。
- いつも忙しそうで、いろいろな仕事や計画を同時進行している。
- 新しい刺激を常に求めている。
思考
- 今やっていることはつまらない。次はもっと楽しいことがあるはず。
- ネガティブ思考はまっぴら。もっと楽しいことに頭を切り替えよう。
娘: すごく思うよ。小学校のころから、いろんな習い事をしたし、好きなものがコロコロ変わってたからね。
父: 新体操、器械体操、絵画、マラソン……。毎年変わってたね。
娘: 何かを好きになると、それだけに夢中になるんだけど、飽きるのも早い。
父: 習い事はそうだね。でも、興味関心はわりと一貫してない? 絵と工作がずっと好きだったし、3年生のときは木材を削ってライトセーバー(スターウォーズのジェダイの武器)を作ったよね。蛍光スプレーで色を付けて、グリップまできっちり作り込んでた。4年生の時は、竹とタコ糸で弓矢を自作したじゃない。で、それを「クラスのみんなに見せる」って弓をたすき掛けにして登校してたよ。
娘: 担任の先生が、あぜんとしてた(笑)。あと、柴犬を飼ってもらえなかったから、ダンボールで等身大の柴犬を作って、それをペットにしたり。※柴犬を飼いたがったが、妻の反対で却下される出来事があった。ちなみに、娘が本気でお願いしてきたのは、これが唯一
父: あれにはあきれたね。ご丁寧に親子2匹の柴犬を作って、名前まで付けてたから、いじらしくって……(笑)。
娘: だって、飼わせてもらえなかったから……。
父: 5年生のときは、木の上に秘密基地作るのがマイブームだったでしょ。木に釘を打ち込んで階段にしたり、毛布を持ちこんで、寝ようとしたり、石ころを枝に並べて、「爆弾で敵を攻撃するのだ」ってやってたよ。それも、女の子が1人で。
娘: 何かを作ることが、大好きなんだよ。
父: あれこれ手は出しているから移り気に見えるけど、興味関心はブレていないって思うなあ。小さい時に、いろんなことに挑戦するのって、1つのことしかしたことのない子どもより経験が広がるし、世界が広がるよ。そーゆーことの積み重ねがあったから、美術部に入ったんだろうし、小説を書くんだと思うよ。だから、飽きっぽいってことはマイナスじゃないって。
娘: そう言われると、そんな気もしてくるね。
父: じゃあ、今度はお父さんの結果を見てみようか……。「理屈屋」らしいな。
合理主義者の父を娘はどう見る?
理屈屋とは?
説明
- 人間関係も含め、あらゆることを合理的に処理しようとする気持ちが強い。
特徴
- 閉鎖的で大抵の人に本心を見せようとしない。
- 感情を見せるのは思考に熱中したときのみ。
- 周囲が騒がしくしているのを遠くから眺めて分析するのが好き。
- 疑ぐり深く議論好き。
思考
- 感情など取るに足りないものであり、混乱の基でしかない。
- 理屈に合わないお粗末な思考力の人間が多すぎる。
- 最も大切なのは知識、理解、そして洞察である。
- 自分の価値はどれだけの知識や能力を身に付けられるかに掛かっている。
娘: それはすごく思う! いっつも理詰めで話してる印象がある。「結論から話しなさい」とか「まとめると、どういうことだ?」って口癖みたいに言うし。
父: 変かな? 印象悪い?
娘: 正しいのかもしれないけど、何か、ちょっと。どうなのかなって思うことはある。
父: 一般的な男性と女性の差なような気はするけどなあ。
娘: でも、話し方に冷たさを感じることはあったよ。言い方1つで、印象は違うんだから、その辺りは注意してほしいな。
父: はい……。じゃあ、「優等生」は?
優等生とは?
説明
- たえず実績を上げ、何かを達成しないと自信をもてない。
特徴
- 競争心が強く、イメージや地位にこだわる。
- 不安を表に出さないでポジティブなイメージを作るのがうまい。
- 他人の心をつかむために場面ごとに違った顔を使い分ける。
- 結果志向の仕事人間。
- 人とのあいだに距離を保ちたがる。
思考
- 有能な人間にならなければ。
- 感情的になったら結果を出せない。
- 考えたり、行動したりすることのほうが大事だ。
娘: お父さんって、感情はあまり表に出さないよね。いつも冷静でいようとしてる。
父: んー、確かに感情をあらわにするタイプじゃないな。声を荒らげたり、感情をむき出しにするのは、子どもっぽくてカッコ悪い行為だと思ってる。
娘: あとさー、頭の善しあしとか、知識の有るなしで人を判断してそう。それと、感情的になりやすい人を、軽蔑するでしょ? 態度と目つきで分かるよ。
父: そう言われると、確かに当たってるかな……。でも、そんなふうに考えたことがなかったから、気を付けなくちゃ。じゃあ、お父さんも、感情をストレートに出して、「サオリタン、サオリタン! 手をつないで一緒にお買い物行こうよっ!」とかやればいい?
娘: だから、キモいっつーの……。
このPositive Intelligence。そもそもは1人でやるものでしょうが、今回のように誰かと一緒にやって、結果を交換して話し合うのって面白いです。1人では気付けなかった新しい発見もあれば、人に指摘されて初めて深く考えることもありますから。ちなみにこのテスト、娘は「大人だけじゃなくて、学生にもオススメだよ。もし、学校のクラス全員でやったら、スゴイことになりそう」と興奮していました。
結果をクラスメイト同士で交換し合うのはちょっと恥ずかしい気もするかわりに、互いに感じたことを話し合ったり、1つ1つの弱さについて解説があれば、各自が自分を見つめ直すよいキッカケになるかもしれないですね。
インターネットでカンタンにできて、しかも結果はメールで即時に届きます。所用時間も15~20分程度。タブレットでもできますよ。
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