父と娘の週末トーク・最終回:娘と父のマジトーク(その10)「生きる意味を見つけていない大人っているの?」
父と娘が1つのテーマに沿ってガチで話し合う本企画。最終回は娘のリクエストで「生きる意味」について。皆さんは誰かに生きる意味を聞かれたら、どのように答えますか?
父と娘が1つのテーマに沿ってガチで話し合う本企画、今回が最終回です。テーマは、娘のリクエストで「人間の生きる意味」について。話が盛り上がりすぎたので、2回に分けてお届けしています(前回を未読の方はこちら)。
「生きる意味」という重いテーマ。ですが、中学生とオッサンという立場を越えて、2人の人間として本音で話し合うことができ、終わった後はお互いが清々しい「言い尽くした感」を味わうことができました。
今回も、朝のガストで話し合いました。
このあいだは、サオリが考える「人間の生きる意味」を話してくれたよね。
娘: うん、「自分が、未来の人のための役に立つよう、今をがんばることが私の生きる意味だ」って伝えたよ。
父: これ、お母さんにも教えたんだけどさ、うなってたよ。「普通、中学生の考えつく結論じゃない」ってさ。
娘: 早速だけど、今日はお父さんの意見を聞かせてよ。
父: (30秒ほど考え込んで)お父さんはさ、そもそも人間に生きる意味があるって思うことそのものが違うような気がするんだ。
娘: なんで?
父: もしかしたら、意味なんてないかもしれないって考えてみたことはある?
娘: ……ないなあ。っていうか、意味はあるでしょ。
父: 例えば、アリに生きる意味はある?
娘: アリ? いや、別に……。
父: 昆虫にはない? じゃあ、カエルやヘビは? 鳥や魚は? ライオンやサルはって考えていくと、どう?
娘: うーん、他の動物のエサになるとか? 自然を守るとか?
父: 生態系という大きな枠の中では、食われることが意味かもしれないね。でも、動物本人は、「エサになるのが自分の生きる意味だ」とは思ってないはず。むしろ、生き残るために必死だよね。
娘: じゃあ、どの生き物から生きる意味が発生するんだろ?
父: 人間様になったとたん、生きる意味が与えられて、他の生物には意味がないってのも、おかしな話じゃない?
娘: うーむ。
父: 人間にだけ、高尚な意味があるって考え方が、おこがましいような気がしてる。
娘: でも、人の命は大切だよ。動物とは違うよ。人権とか生命の尊厳とかいろいろあるんじゃ……。
父: それはそうなんだが。サオリやお父さんが死んだところで、家族は悲しむだろうが、世界は何の問題もなく回る。
娘: じゃあ、人間には生きる意味はないって言うの?
父: いや、そうでもないんだ。お父さんが言いたいのは、「意味は誰かから、自動的に与えられるものじゃない」ってことだ。もしも、サンタから「君の生きる意味をあげるよ」ってプレゼントされて、箱の中に自分の生きる意味が書かれた紙切れが入っていたとして……納得できる?
娘: たぶん、できない。
父: 「生涯独身のまま、仏の道を極めることが、サオリさんの生きる意味です」って書かれてたら?
娘: 「勝手に決めないで。私のやりたいことじゃない」って思う。
父: だろ? だから、意味は誰かから与えられるものじゃなくて……。
娘: 自分で見つけるもの?
父: だと思ってる。
娘: そうだね。
父: たぶん、生きる意味は、人それぞれ違うんだろうな。
娘: 例えば?
父: レスキュー隊員の生きる意味は、災害から人を救うことだったり、災害防止のために活動することだったりするよね。
娘: うん。
父: 自動車のエンジン技師の生きる意味は、人々が行きたい場所へ気軽に行き来できて、かつエコでクリーンな道具を提供することで、便利な世の中を築くことなのかな。
娘: そうやって考えると、人次第で意味はどうとでも変わるよね。
父: つまり、人間の生きる意味は、
- そもそもは存在しない(かもしれない)
- 人から与えられるものではなく、自分で見つけるもの
- 人それぞれで異なる
といえる。
娘: うーん、だんだん見えてきた気がする。
父: 1~3を見て気づくのは、「意味を見つけるのは、しんどい行為である」ってことだね。だから、中には生きる意味を持っていない大人もいるかもしれない。見つけられないまま一生を終える人も、いるかもしれない。
娘: っていうか、きっといるんだよね? 誰にも言わないだけで。
父: 怖いね。不幸の極みだね。
娘: じゃあ、そろそろ聞かせてよ、お父さんの考える「人間の生きる意味」って何?
父: お父さんはね……「人の役に立つこと」だと思ってる。
娘: うん。(目で「それで?」と促す)
父: 役に立つ領域や方法はなんでもかまわない。自分の持つ知識、知恵、能力を、人の役に立つために使う。使うことで社会に貢献する。どうせなら、より多くの人に、大きな影響を与えられるような役立ち方をしたい。そうできるよう、努力を重ねる。それが人間の生きる意味だと思ってる。
娘: (少し間を置いて)……私のと、似てるね。
父: そうだね。人のためにって部分は、サオリと似てる。でも、サオリは「未来の人のため」って考えている分、お父さんより一歩進んでいる気はしたけど。
娘: エヘヘヘ、私のほうが、すごいってことだ(笑)。
父: あと、お父さんにはもうひとつ生きる意味がある。百聞は一見にしかずだから、このTED動画を観てほしい。
娘: どんな話?
父: ニューヨークのハドソンに飛行機が不時着したときの経験談なんだけど、「死を覚悟したときに心によぎったこと」を5分でスピーチしてる。ここで語られていることも、お父さんのもう1つの生きる意味なんだ。
リック・エリアス:不時着事故から学んだ三つのこと
2009年1月、ニューヨークを流れるハドソン川に不時着した1549便の最前列に座っていたリック・エリアス。不運に見舞われ降下を続ける機体の中で、心をよぎった思いとは。
面倒くさそうなことを、行動できるかどうか
娘: でもさ、意味は与えられるものじゃなく、自分で探すものってことは分かったけど、どうやったら見つかるんだろう? だって、こういうこと、考えている人は世の中にいっぱいいるでしょ?
父: 考えているだけじゃ、見つからないんじゃないかな。
娘: そう? 私はあれこれ考えて、見つけたつもりだけど。
父: 1週間、悩み続けても答えが出ないとき、次の1週間も同じように悩み続ければ、答えは出るかな?
娘: そりゃ、出ないよね。
父: だよね。でも、考えれば答えが出ると信じて、ひたすら考えたり悩むことに時間を費やす人もいる。
娘: でも、考えなくっちゃ、答えは見つからないでしょ。
父: こういうでっかい質問は、1人のちっぽけな脳みそだけで考えたって、見つかりっこないんだよ。
娘: じゃあ、どうすればいいの?
父: もし、1週間考え続けて答えが出なかったら、考えるのをいったんやめたら? 代わりに、1週間調べまくるんだ。本を漁る、ネットで情報を探す、関連したテレビを見る、それを1週間やってみる。
娘: うん。
父: 次の1週間は、調べるのもやめて、人に話を聞きまくる。詳しい大人を探す、イベントに行く、専門家に質問する、自分の考えをぶつけてみる、オススメの本を教えてもらう、まだ知らない情報源を尋ねる、次に会うべき人を紹介してもらう。
娘: 何かしら、行動するんだね。
父: そうやって1週間考え、1週間調べ、1週間人に会うのと、無為に3週間ウダウダ悩み続けるのとでは、まったく違った結果になると思うよ。
娘: お父さん、たまにはいいこと言うね(笑)。
父: やかましいわ。で、その2つの違いは、「面倒くさそうなことを、行動できるかどうか」なんじゃないかな。ちょうどサオリが、担任の先生や塾の先生に質問をぶつけたり、生きる意味をテーマに小説を書いてみたりしたように。
まとめると、人間の生きる意味は、
- そもそもは存在しない(かもしれない)
- 人から与えられるものではなく、自分で見つけるもの
- 人それぞれで異なる
- 行動なくして見つからない
と言えるかな。
娘: そっか。いつの間にか、私も行動してたんだ。
父: だからこそ、サオリなりの考えが導けたんじゃないの? 自分の娘を媒体上で褒めるのはナンだけど、お前が質問した大人たちより、よっぽど本質を突いているって思ったよ。
娘: 行動するって、大切なんだね。
父: 考えることしかしない人より、考えながら行動できる人の方が、求めているものがはるかに見つかりやすい。でも、行動そのものは面倒だから、ほとんどの人は「ああでもない、こうでもない」って頭の中だけで行ったり来たりするんだろう。
娘: 生きる意味を見つけるって、本当にしんどいね。
父: でもさ、すでに見つけている人たちは、自分の生きる意味を日々意識することはないだろうね。毎日が楽しくて忙しくて、立ち止まってなんかいられないはずだよ。
娘: 頭でっかちな人ほど、ムダに「生きる意味ってなんだ、なんだ」ってなっているのかもね。
父: 生きる意味なんて考えるヒマがないほど、毎日が充実して忙しい状態になりたいもんだ。
連載終了にあたって
以上を持って、本連載は終了です。ご愛読、ありがとうございました。2013年11月から3カ月にわたってお届けしてきた、父と女子中学生の娘の“わりとガチなトーク”。いかがでしたか?
どんな展開になるか見通しが立たないまま、恐る恐る始めた企画ですが、思いのほか好評価を得られ、ロングラン化しました。
特に11月に公開した「お父さんがキモい理由を説明するね」は、驚くほどのいいね!とツイート数をいただきました。感謝しています。ただ、リロードするたびに跳ね上がる数字を見ては、「オレ=キモいで拡散しちゃってる……誰か止めてえ……」と、嫌な汗を垂れ流していました。
「年頃の女子は扱いづらい」「何を考えているのかわからない」「どうせ、チャラいことしか頭にない」といった思い込みがある方は、思い切って週末の朝食に誘ってみてはどうでしょう。初めは、「なんの風の吹き回し?」と不信がられるかもしれないですが、おいしい食事とコーヒーを飲んでいると、不思議と「会話でもするか」という雰囲気になります。
ちなみに、食事をしながらゆっくり会話する場所として、個人的にオススメするのは、コメダ珈琲とガスト。
コメダの良さは、
(1)ソファが快適、
(2)BGMが静か、
(3)席と席の間のスペースに余裕があってリラックスできる。
ガストの良さは、
(1)メニューが豊富で安い、
(2)ドリンクバーでおかわり自由、
(3)朝イチは意外に空いているです。
(1)ソファが快適、
(2)BGMが静か、
(3)席と席の間のスペースに余裕があってリラックスできる。
ガストの良さは、
(1)メニューが豊富で安い、
(2)ドリンクバーでおかわり自由、
(3)朝イチは意外に空いているです。
[父と娘の週末トーク]
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