Internet Explorer: 娘と父のマジトーク(その8)「いじめ撲滅作戦ポスターを貼りまくって、いじめがなくなるわけないじゃん」

2015年10月8日木曜日

娘と父のマジトーク(その8)「いじめ撲滅作戦ポスターを貼りまくって、いじめがなくなるわけないじゃん」


父と娘の週末トーク:娘と父のマジトーク(その8)「いじめ撲滅作戦ポスターを貼りまくって、いじめがなくなるわけないじゃん」 

中学生の娘と本気で話し合うシリーズ、今回のテーマは「いじめ」です。わが子にはいじめと無縁の生活を過ごしてほしいと願ってはいるものの、親ではコントロールしきれない要因が複雑に絡み合うのが悩ましいところです。



13歳の娘がクラスメートから告白されたのをキッカケに、娘と父が割と本気で話し合うこの企画、第8回のテーマは「いじめ」です。
子を持つ親なら必ず気にする、わが子へのいじめ。ここ数年、深刻化するいじめ問題はとてもじゃないですが、他人ごとには思えません。わが子にはいじめとは無縁の楽しくて充実した学生時代を過ごしてほしいと強く願ってはいるものの、親ではコントロールしきれない要因が複雑に絡み合うのが悩ましいところです。
 今回は、朝のマクドナルドで話し合いました。
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“いじめ撲滅作戦”の効果は、大して出ていない!?

父: ストレートに聞くけど、サオリ(仮名)はこれまでいじめを受けたことはある?
娘: ないよ(キッパリと)。
父: 一度も?
娘: うん、まったくない。もちろん、いじめたこともないよ。
父: 小中学校、ずーっといじめとは無縁?
娘: 中学校に入学してから、他の学年であるらしいと聞いたことはある。でも、私の身の周りでは起きてないよ。クラスはみんな仲が良いし。
父: それはすごいな。かなり幸せなことじゃないか。
娘: そうかな?
父: いじめって聞いても、実感が湧かないだろ?
娘: そうだね。ドラマとかマンガの世界では、暴力とか、からかい、盗みとかあるけど、実感はないね。
父: 学校全体で既に撲滅活動的な取り組みをしていて、それが機能しているのかもよ?
娘: 中学校では、“いじめ撲滅作戦”っていうのがあって、学年主任の先生が全校集会で「何かあったら、いつでも先生に相談しなさい。いじめを見たら、止めたり、先生に報告したりしなさい」って話してた。
父: 言葉での説明だけ? 具体的な活動は?
娘: 相談室ってのが用意されてて、そこに行くと専門の人がいて話を聞いてくれるらしい。行ったことないから、どんな場所かは知らないけど。
父: ふむ、カウンセラーがいるんだね。
娘: あと、同じ全校集会で生徒会の人たちが「いじめは悪いことです」って訴える劇をしてくれた。そのあとポスターが各クラスに配られて、掲示板に貼ったりとか。
父: まあ、ありそうな活動だね。
娘: あ、そうだ。アンケートもやったよ。「いじめを見たことはありますか」「いじめを受けたことはありますか」「いじめを相談したいと思ったことはありますか」みたいな質問が並んでて、全部「いいえ」「いいえ」って答えた。
父: いろいろやってるんだ。で、効果は出ているの?
娘: どうなんだろう? 正直、大して出てないような気がする。

男子たちの、隠れたファインプレーで仲良くなれた

父: サオリのクラスは、みんな仲がいいってことだけど本当に恵まれていると思うよ。
娘: そう? そんなもんじゃないの?
父: だって、いじめって大問題になってるでしょ? 全国で起きているし、自殺が社会問題になったり。現実問題として、頭では理解できるよね。
娘: まあね、知識として。
父: ちなみに、サオリのクラスってどんななの?
娘: とにかく明るくてにぎやか。授業中もワイワイしてるよ。
父: 悪い意味でのにぎやかじゃなくって? 騒がしくして、授業を妨害するようなことはしてない? 先生は肯定的に受け止めているのかな?
娘: 先生も笑ってたりするよ。あまりに脱線しすぎたら注意されるけど、とにかく、にぎやかに勉強してるの。
父: ふーん。他のクラスもそう?
娘: いや、それがすごくシーンとした雰囲気なの。
父: へえ。でも、授業ってそもそも、静かなもんじゃない?
娘: だけど、クラス別のテスト平均点は、私のクラスがダントツでトップなんだよ。
父: ただにぎやかなだけじゃなく、結果も出している、と。
娘: そうだよ。他のクラスの先生にも、「何で、1年○組はそんなにいい雰囲気なんだろう」って褒められる。
父: クラスのムードメーカーがいるの? それとも、担任の先生がうまくリードしてくれているの?
娘: 先生はにこやかな人だけど、特に何かをしてるふうには見えないかな。クラスにめっちゃ明るい男子が3人いて、その3人がみんなを笑わせてくれるの。で、周りもつられて明るくなる……って感じ。
父: じゃあ、その3人がいなかったら今ほどには明るいクラスにはなってなかった?
娘: たぶん、なってないね。
父: その3人は、無意識のうちにクラスの雰囲気作りに貢献してくれているっぽいね。隠れたファインプレーかもしれないな。
娘: 今思えば、その男子たちのおかげだね。

先生が味方になってくれなかったら、もう頼れる人がいない

父: もしいじめを目撃したら、サオリはどうする? 1~4番でどれを選ぶ?
  1. 「何やってんだ! やめねえか」って勇ましく止めに入る。
  2. 「何やってんの?」ってマイルドに入っていく。
  3. 見て見ぬフリをする。
  4. 先生にコッソリ報告をする。
娘: 2番かな。その後で先生に報告する。
父: まあ女の子だし1番はできないかな。でもさ、しゃしゃり出ると自分がいじめのターゲットになっちゃうってこともないかな?
娘: そーだねー、それは考えちゃう。いちおう女子だから、暴力を振るわれることはないだろうけど、上履きがなくなったとか、筆箱が隠されるとか、隠れたいじめがあるかも。
父: もしサオリが校長の立場だったら、どんな方法でいじめを撲滅する?
娘: うーーーん……。
父: いじめ撲滅作戦ポスターを貼りまくろうか? 劇を何回もやろうか?
娘: そんなんで、いじめがなくなるわけないじゃん(笑)。
父: 実現性は無視して考えてみよう。じゃあ、こんなのはどう? 「校長にだけ連絡できる、特別な携帯電話」を生徒全員にタダで与えよう。24時間、いじめを見たりされたりしたら、メールや電話で校長に通報できる。校長がイヤなら、カウンセラーでもいい。で、いじめの加害者は即刻退学。通報者の匿名性は厳守される。
娘: うーーーん、いきなり退学はムチャにしても、加害者が全員の先生からとっちめられるってなれば、すごく効果があるんじゃないかな。でもさ、それだけじゃいじめはなくならないと思う。
父: 何で?
娘: やっぱり、いじめられている子は、先生や親には直接言いづらいと思う。
父: 特別な携帯電話を配るだけじゃダメ?
娘: そういう問題じゃない。
父: いじめは犯罪だよ。例えば家に泥棒が入られたら、すぐ警察に通報するよね。言いづらくないよね。いじめられたら、迷わず大人に相談すればいいじゃない?
娘: それは分かるんだけどさ……。何て言うのかな、自分から言うのは抵抗あるよね。
父: じゃあ、サオリがいじめられたら、直接は言いにくい?
娘: うん。まず友達に相談する。で、友達と一緒に先生の所に行く。
父: 1人だと抵抗あるけど、友達と一緒だと、相談しやすいのね。
娘: うん。
父: その差は、何だろうね。
娘: 想像だけど、1人で相談すると真剣に相談に乗ってもらえない気がするの。「お前の勘違いじゃないのか」とか、「それくらい、当事者同士で解決しなさい」って言われちゃったら突き放された気持ちになると思うんだ。だけど友達と一緒行けば、先生だって真剣に話を聞こうとしてくれるんじゃないかな。
父: 証人が複数いるし、先生も腰を上げないわけにはいかない、ということだ。
娘: そう。勇気を出して相談しても先生が味方になってくれなかったら、もう頼れる人がいないよ。だから、勘違いじゃないし、真剣なんだって姿勢を見せるために、友達にも来てもらう。
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「いじめられっ子=心の弱い人=みっともない」って気持ちになる

父: 先生に報告するということはさ、同時に親にもバレるよね。
娘: だよね。死ぬほどキツイね。
父: どっちに先に相談するのがいいのかな、親か先生か。
娘: (じっと考えて)先生かな? 親に先に伝えると、興奮して学校かいじめっ子の家に怒鳴り込みそうじゃない?
父: お父さんだって、そんな立場になったら冷静でいられる自信ないしな……。親に怒鳴り込まれて、そこで初めて先生が事実を知るってのはあんまり好ましくなさそうだね。
娘: 逆に、それでいじめがもっとひどくなってしまうかも。
父: 確かに。先生に先に相談するとして、いつ、どうやって相談する?
娘: 本当にいじめられているかどうか、確かめる。1回からかわれただけなら、スルーする。2回目でアレ? って思う。3回目でおかしいぞって思って、4回目でこりゃ確実にいじめだって判断する。
父: なるほど、何度か確認して、確信を得たら相談するんだね。
娘: でも先生には言いにくいんだよなー。
父: 確実にいじめであると確信できても? さっき言ってた、先生が真剣に聞いてくれないかもって不安があるから?
娘: それだけじゃなくて、気まずいの……。いじめられたことを大人に相談するのって「自分が弱いダメ人間だ」って認めているような気がしちゃう。
父: 自分は被害者で、何も悪いことはしていない。でも、自分が情けなくなる?
娘: うん、「いじめられっ子=心の弱い人=みっともない」って気持ちになるし、先生に弱みを握られてしまう怖さもある。
父: それが、信頼している先生であっても?
娘: 信頼できる先生なら、ギリギリ言えるかな……。
父: 普段接点の少ない学年主任や校長先生は?
娘: かなり、言いにくいね。
父: じゃあ、相談室にいるカウンセラーは?
娘: もっと言えないなー。だって、会ったこともない人で、どんな反応をされるかも分からないんだよ?
父: そういうもんか……。じゃあ相談室を設ければ、生徒が自主的に相談するだろうって思い込むのは、見込みが甘い?
娘: うん、相談したくても相談できないって生徒は実は多いかも。あと、私は男の先生には相談しにくい。できれば、女性がいい。
父: そうなんだ。男の先生のほうが、頼もしいイメージがあるのかなって思ってた。
娘: 女の子の心を理解してくれるのは、やっぱり同性だと思う

いじめは悪ふざけなんかじゃなく、犯罪

父: じゃあ最後に、いじめっ子の気持ちになってみようか。いじめ撃退ポスターを見たり、先生の講話を聞いて「ああ、私はなんて悪いことをしていたんだ。もう、いじめをやめよう」って思う?
娘: (クビを振って)ううん。ケッて思うだけでしょ。
父: やっぱり、そう思うか。
娘: それでうまくいくなら、いじめなんてとっくに消滅してるって。
父: だよな。もっと根本的な方法じゃなきゃダメだろうね。じゃあ、こういうのはどう? いじめの報告をしたら、学校が素早く警察に連絡を取ってくれて、サイレンを鳴らしたパトカーが学校に到着。学校中が「何だ何だ」って騒ぎになる。
娘: え? 警察……?
父: 授業中のクラスに2人の警察官が現れ、極めて事務的な口調でいじめっ子に署まで任意同行を求める。全校生徒の視線を集めたいじめっ子は、両脇を警察官に固められるようにパトカーに乗らされ、サイレン音とともに警察署に連れて行かれる。
娘: ちょっと、何それ……。
父: 署内の取調室で、いじめっ子は徹底的に事情聴取される。ほどなくして校長と担任が学校から駆けつける。血相を変えて飛んできた自分の親を罵倒する相手の親の怒号が廊下に響き渡る。間に割って入る校長、逆ギレする自分の親、群がる野次馬、誰も収集できないカオスに。
娘: 重いわ~。お父さん、重すぎるわ~。
父: どうよ、これ。
娘: ま、まあ、そこまでされたら、いじめは止まるんじゃないかな……。
父: そのいじめっ子、次の日学校に行くの、きっついよね。
娘: 中学人生が終わっちゃうよ……。下手したら、いじめっ子が不登校になる。
父: 冗談っぽく話したけど、学校が警察と協力していじめ撲滅に取り組んでくれたら校内だけで取り組んでいるよりずっと効果があるとは、お父さんは真剣に思うよ。
娘: 私もそう思った。いじめは悪ふざけなんかじゃなく、犯罪だもんね。
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まとめ

今回のテーマはかなり重いものだったので、「トークが盛り上がらないかもしれない」と危惧していました。ところが、意外にも考えていること、感じていることを真剣に打ち明けてくれ、本音をぶつけ合うことができたと感じました。
大人の私からすれば「いじめられたら、いつでも相談しろよ」と軽く考えていたのですが、当人にとっては想像以上にパワーの必要な行為なのでしょう。いじめ経験のない娘でさえ、「もしも自分が被害に遭ったら」、「仮に先生や親に相談しなければならなくなったら」を想像し、沈んだ面持ちになっていました。
いじめのない明るいクラスで過ごしていると聞き、親として安心できました。ただ、ささいなキッカケで友人関係にヒビが入ったり、心が離れてしまうこともあるわけなので、やはり心配のタネは尽きません。
次回は、娘と二人で「TED」(プレゼンの模様を録画したオンライン動画アーカイブ)を見て、感想を話し合ってみようと思います。心を揺さぶるTEDトークはいくつもありますが、中には「子どもと一緒に見てみたい」「子どもがどう感じるか、知りたい」と思えるトークもあります。どんな発見があるか、いまから楽しみです。


次回「生きる意味





[父と娘の週末トーク]
















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