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2015年10月8日木曜日

父と娘のマジトーク「お父さん、前よりキモさがアップしているよ」


重版決定! 父の日を控え特別企画:父と娘のマジトーク「お父さん、前よりキモさがアップしているよ」 

書籍『お父さんがキモい理由を説明するね』の発売から1年、このたび重版が決まったのを機に、中3になった娘と改めて話し合ってみました。締め付けと放任主義どちらの子育てがいいのか、中3女子にスマホは必要なのか、考える力はなぜ大切か。そして父は結局キモいままなのか……?




女子中学生と父がテーマに沿って深く話し合う「父と娘のマジトーク」連載が書籍化されてから1年が過ぎました。おかげさまで販売は順調で、このたびうれしいことに重版が決定しました。

現在中学3年生になった娘(サオリ:仮名)は、塾、部活、受験勉強と毎日忙しい日々を過ごしています。”進路”という大きな人生の節目にいる娘と話し合ったテーマは、改めて「親子関係」についてです。

ay_ph00.jpg今回は週末のジョナサンで、朝食を取りながら改めて娘とじっくり話し合いました




締めつけ型の親 VS 放任主義の親

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父: サオリはお父さんの元で約15年間生きてきたわけだが、お前がお父さんを評価するとして、オレはよい父親だったか?
娘: 真顔で尋ねられると答えにくいな……。まず、親って大きく2パターンあると思うんだ。「厳しく締めつけてくる親」と「自由を与えて放任する親」と。
父: サオリの中で、どっちが良いとか悪いとかあるの?
娘: いや、良いとか悪いとかじゃなくて、どっちも理由があってのことだよね。厳しくする親はしつけとかマナーを大事にして、放任する親は自分で考える力を身につけさせたいとか、考えがあるはずだよね。
父: 自由を与えられすぎて、調子に乗る子供もいるし、厳しくされすぎて反発する子供もいるしな。で、お父さんはどっちだろう。
娘: 自由を与えて放任するほうだね。
父: そうか?
娘: そうだよ。あたしが小さい頃から、あれをやれ、これをするなってお父さんから命令された記憶がない。
父: 意図的にそうしていたからね。サオリだって、厳しくされるよりも自由があるほうがいいだろ。
娘: 命令されるのは嫌い。こっちの言い分を聞かずに一方的に動かそうとされると、むかっとくる。お母さんはガミガミうるさい派で細かく指示してくるタイプだよね。お父さんはその逆。だからバランスは取れていて、これはこれでいいんじゃないかとも思ってる。
父: 別に、夫婦で役割分担を決めているわけじゃないが、結果的にそうなっているね。

子どもにも事情がある

娘: 3カ月位前にさ、「今夜は外食に行くから、17時に全員自宅に集合!」って朝に決めたことがあったでしょ。その日は部活だったんだけど、ミーティングが長引いて17:30を過ぎてもまだ学校だった。
父: 覚えているよ。
娘: 大幅遅刻していたのは分かっていたけど、副部長って立場上、後輩たちを放ったらかして帰るわけにもいかない。でもお母さんは「まだなの?」、「17時って約束でしょ」ってじゃんじゃんメールを寄こしてきたの。
※ 娘は父のお古のフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)を所有しています。

父: うんうん。
娘: こっちも事情があるんだけどなぁって焦っていたら、お父さんが「べつに遊び呆けているわけではなく、部活で忙しいのだから出発が遅れたってかまわん。部活の用事に集中しなさい」ってお母さんをおさめてくれた。事情を察して、あたしの立場を尊重してくれたって思って、うれしかったんだ。
父: ナイスプレーだった?
娘: ナイスだったね。

意図的に自由にさせていた理由

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娘: さっき、「意図的に自由にさせていた」って言っていたけど、どういうこと?
父: その質問の答えはちょっと置いておいて……サオリは小学生時代の自分を振り返って、どんな子供だった?
娘: 何も考えずに本能で動いていたかな。やりたいことをやりまくって、ノーテンキに生きていた。ただ、勉強や宿題はきちんとやったよ。夏休みの宿題は計画的にこなしたから、8月末に慌てるなんてこともなかった。それに関してはキチンとした子供だったと思う。
父: うむ、当時から自己管理能力はあったと思う。お父さんも「勉強しろ、宿題忘れるな」とか一切言う必要がなかったくらいだ。中学校に入ってからは、何か変わったりしたの?
娘: ものすごく考えるようになった。理由は、1年のクラスには知っている人が一人もいなかったから。小学校時代の友達のほぼ全員が別の中学校に進学しちゃったからね。新しいクラスメイトたちとどう話を合わせて、仲良くなるかってことばかり考えていたかな。だから一学期は緊張してた。
父: 考える習慣がついたキッカケということだな。
d;"> 娘: 考えざるをえない環境に置かれたからね。
父: お父さんはサオリに”考える力”を身につけてほしいから、なるべく命令や指示をしないよう心がけているんだ。それが「意図的な自由」ってこと。
娘: 確かに、習い事だって自由に選ばせてくれたし、飽きたから辞めるってなったときも引き止めなかった。でも、自由にさせ過ぎると、子供が甘えん坊になってしまう気もする。
父: 盲目的な甘やかしにならないよう、注意してはいるつもりだぞ。

渋谷駅前ハチ公待ち合わせ事件

父: 「渋谷駅前ハチ公待ち合わせ事件」を覚えているか?
娘: 覚えてるよ! あたしが小6のとき、お父さんが「渋谷でお寿司をごちそうするからハチ公前に来い」って誘った事件ね。一人で電車に乗って、降りたことのない駅で待ち合わせるっていうから、むちゃくちゃ焦ったよ。
ay_ph08.jpg渋谷で待ち合わせと言えばハチ公前広場
父: 方向音痴のお前にあえて地図を渡さず、一人で来れるかなっていう実験でもあったの。川口駅から京浜東北線に乗り、赤羽駅で埼京線に乗り換えて渋谷駅で下車。あとは駅員さんに訊いてハチ公前に16時に来い、とだけ伝えたね。
娘: なのに、なぜか池袋駅で降りて、逆方向の山手線に乗ってしまった。田端駅を過ぎたあたりで、「なんかおかしい」って思って、西日暮里駅でようやく「逆だ!」って気づいたの。西日暮里駅で駅員さんや路行く人に尋ねて、右往左往しながら渋谷駅についた。駅員さんはぶっきらぼうだったけど、電車待ちしている人たちがすごく親切に道案内してくれたよ。
父: 大変だったな(笑)。
娘: ハチ公前がどこかも分からなくて、反対側の南改札から出てしまって、さらに駅前を30分くらいウロウロしたよ……。
父: ハチ公前に現れたのは、予定を2時間過ぎた18時だった。疲れ果ててゾンビのようにヨロヨロ歩いてくる姿を見て、笑ったぞ。
娘: 後でお母さんに話したら、「小6の女の子に無茶させすぎ」ってすごく怒られていたよね。
父: だから保険としてお母さんの携帯電話を渡しておいたの。いつでも電話できる安心感があれば、なんとかなるって思っていたから。

中3女子にスマホが不要な理由

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娘: 自由にさせるって言うわりに、ときどき急に頑固になるとき、あるよね。
父: どんなときだ。
娘: スマホが欲しいってお願いしたとき。
父: あぁ、そうだった。学校の子達の何割くらいが持っている?
娘: だいたい7割かな。ほとんどがiPhone6か6 Plusだよ。お父さんのよりも画面が大きい。
父: オレですらまだ5Sユーザーだというのに、生意気な……(笑)。お父さんは、中学3年生がスマホを持つべきではないって考えている。
娘: 理由は分かってるよ。受験生がそういうモノを持っちゃうと、それに夢中になって勉強が疎かになって、現実から逃げる道具にしちゃう危険性が高いから。今の私がスマホを持つことで良いことってほとんどなくて、マイナスのほうが大きいから……でしょう?
父: その通り。今のお前には益よりも害が多いと判断してのことだ。既読スルーしちゃマズイって焦って返信したり、見ても見なくてもいい動画にうつつを抜かすのが関の山。スマホにお前が支配されるのが目に見えている。
娘: あたしもそんな気がするんだよね。夢中になってしまう自信があるもん(笑)。
父: 金がもったいないとか、人生にスマホが不要というわけじゃない。タイミングの問題でしかないんだから、もうしばらく待ちなさい。

好きなことをして幸せになってほしい

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娘: ”考える力”を身につけてほしいから、なるべく命令や指示をしないって話に戻るけど、お父さんはなぜそんなに”考える力”にこだわるの?
父: すべての親は、我が子の幸せを願うものだ。親は親の考える”幸せの定義”に則って子供を育てるだろ。
娘: うん。良かれと思って厳しくしたり、逆に甘えさせたり、物を与えたり、与えなかったり。お父さんにとっては、「幸せ=考える力がある」ってこと?
父: 考える力がある状態が幸せって意味ではなく、幸せになるための条件って感じかな。サオリは、お父さんが「大金を稼ぐ」のと「好きなことをする」のどっちに重きを置いて生きていると思う?
娘: (間髪入れず)そりゃ「好きなことをする」だよ。やりたい仕事をしているって様子は私にも伝わってくる。いつも嬉しそうじゃん。あと、そんなにカネカネって言わないし。
父: そう。仕事が面白いか、楽しめるかってことが幸せに大きく関わるって思っている。「好きなことをして幸せになる」には、自発的に考える頭脳が不可欠だとお父さんは信じているんだ。

強靭な”考える力”が備われば、きっと幸せになれる

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父: お父さんは、サオリに好きなことに打ち込んでほしい。対象はなんだっていい。リッチになれるかどうか、お父さんがそれを気に入るかどうかは関係ない。お前さえ幸せであれば、地球の反対側で生きてくれていてもかまわない。
娘: そこまで思うの?
父: 好きなことを仕事にするとか、その道で突き抜けた存在に登りつめるためには、めちゃめちゃ悩んで考えて、迷いつつも意思決定して、勇気を出して行動して、批判されたり失敗してもくじけず挑戦しつづけなきゃならんってこと、想像つかない? 少なくとも、人任せな受け身や指示待ちじゃぜったいに実現しないよね。
娘: 思う。それはすごく同意できる。
父: それには、ムッキムキに強靭な「考える力」が必要だと思うわけ。単純な知識量とかスキルとは違うし、IQでもない。
娘: 行動する力とか、自分を信じる力とか……?
父: そうね。柔軟な思考力、豊かな創造性、人の真逆を突く斬新さ、常識を疑うモノの見方、素直かつ柔軟に学ぶ謙虚な心、そこまでやるかと思わせる破天荒さ……とかがそれに当たるかなあ。考える力以外の要素も混じってきているけど(笑)。
娘: 最近思うのは、なんでもいいから経験しまくるって大事ってこと。未経験のことをしたら、新しい興味が見つかるかもしれない。いろいろ経験するのって、やりたいことを見つける近道だと思うんだ。やりもせずに面白くないって決めつけちゃダメ。食わず嫌いはよくないよね。
父: 考えも行動もせず、「毎日がつまらない。面白くない」ってボヤく人がいたらどう思う?
娘: なんでもかんでも人に訊かずに、自分で考えろ。自分で行動して勝手に見つけろって思う。お父さんって、あたしが小学生低学年のころから何か質問するたびに、「自分で考えてみた?」とか「サオリの考えを聞かせて」が口癖だったよね。当時から“考える力”を意識していたの?
父: うん。考える人間に育てるには、サオリにどう接すればいいのか、何を与えて、何は与えてはいけないのか、甘やかすタイミングなのか、突き放すべきなのか……そういうことは四六時中考えてきた。今後も、どうすればサオリが幸せになるかを考えて行動する。そこにブレはないよ。
娘: ……そこまで考えてくれていたってことはうれしいな。理由が分かれば、どんなに厳しくされてもナットクできるって思う。

今改めて問う! 父はいまだにキモいのか

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父: 最後に、重版がかかった記念すべきこの良き日に改めて尋ねるが、お父さんはまだキモいの?
娘: これまでのトークの流れをぶち壊すようで悪いけど、あいかわらずキモいままだよ。
父: 「お父さんがキモい理由を説明するね」が公開されたのは1年半前だけど、当時と比較して改善が見られたとか、何かしら変化はあると思うんだが。
娘: どっちかというと、以前よりキモさはアップしているかな。
父: (な、なんだと……)
娘: サオリタンとかサオリンって気色悪い呼び方はしなくなった代わりに、不気味さが増している。1カ月くらい前、頼んでもいないのにあたしを塾に迎えに来て、外で30分くらいジーッと待っていたでしょ。先生たちが「窓の外から身動きせずに中を覗いている無表情の中年男性がいて怖い」ってざわついてたのよ。「……それ、ウチの父です」って恥をかいたんだからね(怒)。
父: 塾なんだから、やってくる大人は塾生の父兄ってのは明白だろ。それを怖いだなんて失礼な。
娘: 行動がしつこいんだって。風呂上がりに素っ裸で歩きまわるのだって変わってない。中学3年の女子がすぐそばにいるというのに。
父: す、すまん。GWを境に急に気温が上がって、つい横着をしてしまった。今後は腰にタオルを巻くから。
娘: 腰もイヤだよ。ムチムチのお腹がキモいよ。脱衣所で着替えてから出てきて。
父: えー、湯上がり直後は汗をかいて服が濡れちゃう……。
娘: あたしはそうしているよ? それとね、ちょうど昨日、学校でMちゃん(友人)に「サオリのお父さんってさ……その……なんていうか、アレだよね……」って言われたのよ。なんか申し訳なくなって、あたしが謝っちゃったよ。
父: 「アレ=カッコいい、クール、ダンディ」という解釈はできんのか。
娘: できんわ! 公開授業にやってきて、授業中に娘と目が合うたびに笑顔で小刻みに手を振ってくるなんて、いい加減おかしいって気がついてよっ。そのことが”アレ”なの。男子にも見られてるし……。あー、もーヤダ。

キモいけどいい父親?

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父: さっきから言わせておけば、ずいぶんと好き勝手言ってくれるじゃないか。
娘: お父さんもなんか言い返す? いいよ、あたしの悪い生活習慣や改めるべき点を指摘してよ。
父: いいだろう、この際だからハッキリ言わせてもらうぞ。サオリは……サオリは……えっと……
娘: もっと父とベタベタしろとかはナシだよ。
父: な、何もない……。お前には注文が何ひとつない。今のままのサオリでいてほしい。
娘: (勝ち誇ったような笑みを浮かべて)はい。ただね、ひとつフォローしとくと、キモさは別にして、しつけとか教育面でお父さんに文句はないの。そういう意味で直してほしいことってないしね。あたしが言うのもナンだけど、いい父親だって思ってる。認めるのがなんだか悔しいんだけどさ(笑)。
父: マジで? それは初めて聞いたよ。すげーうれしい。どうか忘れないでほしい、お父さんはありのままのサオリタンを愛しているということを。
娘: だーかーら、キ・モ・い!!!!!

以上、まもなく15歳になる中学3年女子と44歳の父の「親子関係」トークでした。

トーク終盤に「キモさがアップしている」と言い放ち、ステキだった話の流れを木っ端みじんにしてくれたKYな娘ではありますが、学業、部活、受験勉強と毎日一生懸命に生きています。
いつの時代も、親は子の幸せを切に願うもの。子の幸せのために親ができることは何か? 何を伝え、何を話し合うべきか? この書籍が、愛する貴方のお子様の幸せ構築の一助となりますように。

ay_nkym04.jpg『お父さんがキモい理由を説明するね』




















[父と娘の週末トーク]

























世の中の仕事の9割はつまらない?――中2の娘と4時間半激論してみた


父と娘のマジトーク・クリスマス特別企画:世の中の仕事の9割はつまらない?――中2の娘と4時間半激論してみた 


女子中学生と父親がテーマに沿って深く話し合う「父と娘のマジトーク」。連載が終わって約1年、中学2年生になった娘が「働くこと」について話したいと言ってきたため、連載の番外編をお送りします。何のために働くのか? 父の仕事を子どもはどれくらい知っている? 現代っ子が仕事について、どんな期待と不安を抱いているのか、徹底的に話し合いました。



メリークリスマス! 皆さんお久しぶりです。2013年1月から2014年1月までの約1年間、「父と娘の週末トーク」という連載を書いていました。

「もしも、女子中学生と父親がちょっと話しにくいテーマについて深く語りあったら?」というきっかけから始まった本連載はおかげさまでロングヒットになり、春には書籍化もされました。

連載当時、あえて取り上げなかったのが「仕事について」。仕事というテーマは、単体テーマとしては大きすぎて扱いきれるか不安だったこと、そしてまだ当時の娘は「働くこと」にほとんど興味を示していなかったため、このテーマについては連載ではほぼ触れませんでした。
連載終了から1年弱が経ち、娘は中学2年生になりました。彼女は最近、将来(進学&ボヤッとした将来)について考える機会が増えてきたそうなので、「あのときできなかった話をしようか」と互いが腰を上げることに。そこで今回久しぶりに「父と娘の週末トーク」をやってみることにしたのです。

現代っ子は仕事・働くことにどんなイメージを持っているのか、将来は今の学業の延長線上にあることを意識できているのかどうか、どんな期待と不安を抱いているのか。今回は土曜の朝6時に自宅近所のガストで話してきましたよ。
ay_maji01.jpg今回も近所のガストで娘と話してきました

「働くこと」に対して、マイナスイメージが湧く理由

父: 学校の授業で、「仕事」とか「働くこと」について学ぶ機会ってある?
娘: 小学5年生のとき、社会科見学で群馬の日産工場に行ったことはあるよ。
父: 中学校では?
娘: うーん、あんまりないかなあ。
父: 今年の夏、学校のカリキュラムの一環として職業体験しなかったっけ? 小学校に何日か行って、担任の先生をサポートしたり、小学生と遊んだりしただろ。
娘: あー、あれね……。働いたって実感はなかったけどね。
父: たった2日間かそこらだもんね。お客さん扱いされてオシマイだろうな。
娘: うん(笑)。授業で仕事を学ぶってこと、ほとんどないんだよ。
父: 「仕事」と聞いて何を思い浮かべる? どんなイメージが湧く?
娘: (しかめっ面をして)面倒くさい……疲れる……だけど、お金はもらえる……のがお仕事なんじゃないかと。
父: 働いた経験がないのに、ずいぶん仕事に対してマイナスイメージを持っているじゃないか。
娘: 大人は、生きるために仕方なく働いているんじゃないのかな? そういう気持ちはどこかにある。
父: そう思うってことは、サオリの周囲の大人が、そんな様子で働いているってことか?
娘: うん。
父: 誰よ?
娘: 職業体験で行った小学校の担任の先生とか。生徒に怒ってばっかりで、全然笑顔を見せずに、いつもムスッてしてたんだ。よっぽど仕事が面白くないのかな~って思ったよ。
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父: ほうほう、他には?
娘: いま通っている中学校でも、楽しそうに働いている先生はほとんどいないように見える。あたしは1年生のとき、常に一番前の席に座っていたんだけど、生徒が指示通りに勉強しないと舌打ちして、それが聞こえることもあったの。「先生、辛そうだな」って思った。
父: 学校以外の大人は?
娘: 登校するとき、いつも交差点にある交番の前を通るの。そこで交通整理とか見回りをしているおまわりさんがいるんだけど、信号無視する自転車が目の前を通っても知らんぷりしてる。他の同僚みたいな人とおしゃべりしていることもあって、何やってんだって思う。
父: そういう大人を日ごろ見ているから、働くことが面倒でイヤな作業だって思えてしまう、と?
娘: そうだね。

お父さんは、イキイキと働いているように見えるか?

父: ところで、サオリはお父さんが何の仕事をしているか、知っているよな?
娘: (焦りながら)えっと……いろいろしているっぽいからよく分かんないけど、作家……だよね?
父: おいおい! 作家ではないぞ。もちろん書く仕事もするが、本業ではないよ。
娘: え、そうなんだ。だって、家でいっつもパソコンを叩いているから、てっきりそうなのかと……。
父: 「パソコン=作家」って決めつけるなよ(笑)。11月にやった「Six Apart ファミリーデー※」ってイベント(参照リンク)で会社訪問しただろう? そのとき業務内容の説明を、社長直々に受けたじゃないか。
※Six Apart ファミリーデー……LinkedInの企画した会社参観日イベント「Bring in Your Parents Day」の主旨に賛同し、シックス・アパートが企画したイベント。分かりやすく言うと、授業参観の逆バージョン。
ay_maji03.jpgSix Apart ファミリーデーのようす
娘: む、難しくって、全部理解できなかったよ(汗)。
父: 念のため言っておくと、シックス・アパートは作家の集団ではないし、新聞記者の集まりでもない。もちろん、出版社でもメディア企業でもないぞ。
娘: そうなんだ。初めて知ったよ……。。だってお父さん、家では仕事のこと話さないし、仕事をするときは無言でキーボードを叩いているでしょ。改まって説明してくれたこともなかったじゃない。
父: うーむ、たしかにサオリの言うとおりだ。お父さんの仕事は後で説明するとして、シックス・アパートで社員の人たちと交流したろ。あの人たちはどうだ? 仕事を楽しんでいそうか、イヤイヤやっていそうか。
娘: きっと自分で望んであの場所にいる人たちだと思う。イヤイヤでたどり着く場所にしては、素敵すぎるオフィスだったし(笑)。実際に働いている姿は見ていないから想像だけど、たぶん間違いないね。
父: やっている仕事は1ミリも分からなくても、きっと楽しく働いているだろうと?
娘: そんな気がするよ。
父: そこの一員であるお父さんは?
娘: そりゃあ、やりたい仕事ができているんじゃない? 家でも辛そうな表情とかしていないし。
父: お前、ついさっき「仕事は面倒で辛いモノ」って言ってなかったっけ。矛盾してない?
娘: あれ? 本当だ。つまり、その……例外もあるってことじゃないかな。

世の中の仕事の9割がつまらない?

父: サオリが日常接点がある大人は、辛そうに働いているように見えるけど、世間に目を広げると楽しめている大人はいるってこと?
娘: きっと、そうじゃないかな。
父: 周囲の大人の印象に引っ張られて、マイナスイメージは持たないでほしいぞ。
娘: でもさぁ、やりたいことを仕事にできる人はほんの一部でしょ?
父: やりたい仕事をしている人と、イヤイヤ働かされている人、割合はどれくらいだと思う?
娘: うーん、少なくとも半分以上は……いや、もしかして9割くらいの人は、やりたい仕事ができていないんじゃないかな。
父: それって、世の中の仕事の9割がつまらないって意味? 楽しい1割の仕事をみんなで奪い合っているってこと?
ay_maji04.jpg世の中の仕事の9割はつまらない?
娘: そうは思いたくない。だとしたら、悲しい。
父: たとえば、お前の周囲の先生はたまたま楽しくなさそうでも、情熱にあふれた先生だってどこかにいるだろう?
娘: (ちょっと考えて)確かにそうだね。塾の先生はすごく熱心だし、明るいし、やる気を感じるもん。
父: 学校も塾も、教える仕事ということでは似ているけど、楽しめる人とそうでない人がいるってことだな?
娘: うん。
父: じゃあ何の仕事か、仕事の名称だけで、面白い、面白くないと決めつめるのは……。
娘: 間違っているのか……。決めるのは、人の心次第だね。
父: 仕事の9割がつまらなくて、1割だけ面白いって考えはおかしいってことがハッキリしたな。

メロンパンの皮だけを商品にする仕事は面白そうか?

父: サオリの周囲の大人はほぼ学校関係者に限られてしまうと思うけど、世間には、いったいいくつくらいの職業があると思う?
娘: 百! いや、千くらいあるのかな?
父: とんでもない。万単位であるぞ。
娘: ま、万!? うそだぁ~!
父: 我々が知らないだけ。聞いたこともない世界で、想像を絶する仕事をしている人が大勢いるんだよ。
娘: 想像もつかないよ、たとえばどんな?
父: そんなこともあろうと、新聞(日経MJ)を持ってきたよ。ちょっとめくるだけでも色々な職業が見えてくる。なになに……居酒屋が新業態店舗を始めた、エキナカに新しいコンセプトのモールが誕生した、最近売れているCDと映画のランキング、吉野家の牛丼が近々値上げになる、メロンパンの皮だけを商品化した……。
娘: どれどれ……? メロンパンの皮だけを商品にしちゃったなんて、こんなふざけたことを考えちゃう大人がいるんだ。こんなの、売れるのかな?
父: 売れないと思う?
娘: ……ちょっと食べてみたいかも(笑)。
父: お前がそう思わせられたってことは、これを考えついた人の勝ちだな。サオリの知らない世界では、こんなことが日夜繰り返されているんだ。
娘: うーむ、あたしが知らないだけなのか。
creativecommons photoいろいろな人たちがいろいろな仕事をしている(Photo Credit: Gueоrgui via Compfight cc)
父: 牛丼がほんの数十円高くなることは消費者である我々からしたら、「それがどうした」っていうくらい些細(ささい)なことだ。でもその世界で生きる大人にとっては、生きるか死ぬかの切実な問題なんだよ。
娘: 世の中って、めちゃくちゃいっぱいいろんな出来事が起きてるんだね。
父: 新聞を見ただけでも知らない世界が垣間見える。仕事が面倒で辛いものだと、簡単に決めつけたりはしないでほしいな。あと、世の中のことに関心を持ってね。
娘: うん、分かったよ。

15年後、今は存在しない産業に携わっているかもしれない

父: いまの若い人って、将来を不安視する傾向があるらしい。ちゃんとした仕事に就けるだろうか、お金は稼げるだろうか、結婚できるだろうか、老後は大丈夫だろうか、政府の舵取りは問題ないだろうか、と。
娘: あたしはどっちかって言うと、不安より期待のほうが大きいよ。
父: そりゃいいことだ。ちなみに不安要素って何?
娘: やりたい仕事に就けるか、就けたとしても周りの人についていけるか、だね。
父: やりたいことはあるの?
娘: 動物関係の仕事をしたいとモヤモヤッと思うくらいで、べつにこれって決めたわけでもないし、まだ分からない。
父: そりゃそうだ。知らない仕事のほうがはるかに多いしね。これから時間をかけて探していけばいいんじゃない?
娘: お父さんは中学生のとき、将来のイメージはあったの?
父: ぜんぜんない(笑)。なにしろ、当時は存在すらしなかった世界で働いているからなぁ。
娘: どういうこと?
父: お父さんが子供のころは、家にはパソコンも携帯電話もなく、インターネットなんてSFの世界の話だったんだ。
creativecommons photoお父さんは昭和の人……(Photo Credit: Gueоrgui via Compfight cc)
娘: お父さんは昭和の人だしね。
父: でも、どういう巡り合わせか、インターネットの世界に身を置いている。ここがゴールではなかったけど、いろんなことをやっていたらたどり着いちゃった。同じように、15年後のサオリは今は存在しない産業に携わっているかもしれない。
娘: そんなことあるのかなー?
父: 革命的な技術革新のせいで今存在する仕事がなくなって、新しい産業が生まれることはよくあるじゃん。
娘: 馬車の代わりに、自動車が誕生したとか?
父: そうそう、現代だって馬車に当たる何かはあるし、馬車に代わる新しい何かもあるよ。
娘: だとしたら、いくら考えても結論なんて出ないよ?
父: ここで結論を出さなくていいよ(笑)。いま持っている知識だけで将来を決めようとしないってことだけ、覚えておいて。

クラウドファンディングってすごすぎる

父: 将来の選択肢は、今ある仕事から選ばなくちゃいけないとは決まっていない。たとえばこのサイトを見てごらん。
ay_maji07.jpgクラウドファンディングを行うサイト「CAMPFIRE」
娘: キャンプファイヤー?
父: 「クラウドファンディング」といって、アイデアに対してお金を世間一般の人々から集める仕組みなんだ。音楽、本・漫画、アート、映画……「アイデアはあるけど、お金がないからみんな助けて!」って呼びかけることができる。
娘: えーっとなになに、「戦艦大和を復元するプロジェクト」、「写真集を作る」、「オタクイベントを開催する」、「アフリカに日本食を広める」……関係ないものがいっぱい並んでいるけど、まさかこれを本気でやろうとしているの?
ay_maji08.jpgCAMPFIREで進行中のプロジェクト
父: そうだよ。パーセンテージは、目標額に対する、現時点で確保した金額の割合だ。
娘: どれどれ……えぇっ! 戦艦大和は149%!? しかも、100万円以上も集まっているよ。すごいじゃない!
父: このアイデアに賛同して、応援したいって人がそれだけいるんだな。キャンプファイヤーだけじゃなく、「READYFOR?(レディーフォー)」とか、「Makuake(マクアケ)」、「ShootingStar(シューティングスター)」とか、すでにいくつものクラウドファンディングサイトがあるよ。
娘: すげー……お金ってそんなカンタンに集まるものなんだ……。ん? まだ5%しか達成できてないアイデアもあるね、イケてないってことかな。
父: それは募集を開始して間もないからだよ。お父さんが言いたいのは、やりたいことがあるなら、クラウドファンディングって手段もある、ってこと。お金がなくても、仲間がいなくても、クールなアイデアと行動力があれば、何かを始められるんだ。ステキだろ?
娘: すごいよ~、クラウドファンディングすごすぎるよ~!

面白い仕事を思い付いたら、自分で作ってしまえばいい

父: 念のために言っておくが、集めたお金が自分の懐に入るわけじゃないぞ。勘違いするなよ(笑)。あくまで、プロジェクトを実行するための資金だからな。
娘: 分かってるって(笑)。
父: こんな素敵な仕組みを作ってくれた人がいることに、感謝したくないか?
娘: これを発明した人は天才だよ! クラウドファンディングって仕組み、誰がいつ発明したの?
父: 企業が他人から資金を調達するって考え方は大昔からあったよ。インターネット上で多くの人々から少額のお金を集めるってコンセプトって意味では、ここ数年の動きだよ。
娘: 今すぐには何も思いつけないけれど、あたしも何かやってみたい。なんだかワクワクしてきた!
父: クラウドファンディングって仕組みがあれば、やりたいことができない言い訳がなくなっちゃうね。
娘: お金を集めようとしている人たちの写真を見てるとさ……とってもイキイキしてるっぽいね。
父: そりゃあそうだろう。クラウドファンディングを知って、仕事に対する印象は変わった?
娘: すごく変わった。働くって、面白くて価値があって、ワクワクすることなんだ!
父: アイデアさえあれば、誰でも自由にやりたいことができる環境が整っているってことだ。サオリはいい時代に生まれたな。
娘: うん。でもさ、ふつうの中学生は絶対にこういう仕組みは知らないと思う。こんな世界があるってこと、学校でも教えてくれたらいいのに。どうして誰も教えてくれないのかなぁ? 日本中の中学生に伝えるべきって思うくらい、素晴らしいことだと思うよ。

仕事の報酬は仕事

父: サオリ、仕事の報酬ってなんだと思う?
娘: そりゃあ、お金でしょ?
父: 他には?
娘: やりがいかな……? 人から感謝されて嬉しいとか、達成感を味わうとか。
父: もう一つあるんだけどな。
娘: えーーー? それ以外には思いつかないよ。忍耐力がつく、とか……。
父: 仕事の報酬は、仕事だよ。
娘: 仕事をしたら、仕事をもらえるってこと? どういう意味?
父: いい仕事をすると、さらに面白い仕事をさせてもらえるってこと。
娘: たとえば?
父: サオリがラーメン屋でアルバイトを始めたとする。最初は何も分からない素人だから、チラシ配りのような簡単な仕事をさせられる。駅前に行って、アカの他人に頭を下げてチラシを配る。大半の人は無視して受け取ってくれない。
ay_maji09.jpg(写真はイメージです)
娘: うんうん。
父: 「こんなくだらない仕事、やってられるか」と文句を言って辞める人と、「これくらいの仕事、やりきってみせる」と踏ん張る人がいる。
娘: なんとなくだけど、半分以上の人が辞めちゃう気がするな。
父: そこで辞める人は、次のステージに進めない。チラシ配りを完璧にこなせる人は、やがて「じゃあ、こっちをやって」と別の仕事を与えてもらえるようになる。

最初から面白い仕事をさせてはもらえない

娘: 上の人に満足してもらえると、いろんなことをさせてもらえるようになるんだね。
父: しっかりとチラシ配りができれば、チラシデザインの意見をしても受け入れてもらえるだろうね。でも、単純作業さえ満足にできない人の声に上の人が耳を貸すわけがないと思わない?
娘: それはそうだ。子供でも分かる、アタリマエのことだね。
父: チラシ配りができれば、デザインを任せてもらえるかもしれない。それもできるようになったら、「インターネットとかSNSは得意? お店にできる人がいなくって困っているんだけど、うちの店のTwitter店長になってよ」ってお願いされるかもしれない。
娘: Twitter店長になりたいとは考えもしないけど、自分のアイデアを実現できるって意味では、チラシ配りよりもずっと面白そう。
父: だろ? そこでもいい仕事をすれば、信用が積み上っていくよね。さらには、「若い女性客を開拓したいんだけど、サオリちゃんの意見を聞かせてもらえる?」、「最近の女の子はこういう組み合わせのメニューに敏感ですよ。新しいメニューを提案してもいいですか?」って展開になるかもしれない。
ay_maji10.jpgラーメン屋でバイト。始めはチラシ配りでも、取り組み方で仕事が変わってくるかもしれない(写真はイメージです)
娘: チラシ配りからかなり進展してきたね。
父: 俄然、仕事が面白くなってきていると思わない?
娘: 本当だ。同じラーメン屋でも、仕事内容もやりがいもぜんぜん違う。
父: いい仕事をすると、より素敵な仕事をさせてもらえるって例ね。
娘: 仕事の報酬は仕事ってことが分かった。最初から面白い仕事をさせてはもらえないんだね。
父: そりゃそうだよ、面白い仕事は他の誰かが努力の末に手に入れたわけで、新人に「はい、どうぞ」と渡してくれると思うのは考えが甘いわ。

学校で学んだことを一切忘れた後に残ったもの=“教育”

娘: この仕事は面白くって、あの仕事はつまらないってカンタンに決めつけるような言い方は、しちゃダメだね。
父: つまり?
娘: この仕事は面白くなくて、あの仕事は面白いって、決めつけられるものじゃないでしょう。さっきのたとえのように、ラーメン屋のアルバイトだっていくらでも面白くできる。っていうか、どんな仕事だって、働く人の気持ちや心がけ次第で面白くも、つまらなくもなるって思うんだ。
父: うん、対象がなんであれ、面白い領域はあるんだ。そのことにサオリが気づいてくれただけで、お父さんはうれしいよ。
娘: じゃあさぁ、どういう人がそこに行けるんだろう? 学生のときにどんなことを努力すれば、大人になったときそういう人間に近づけるのかな?
父: それって、学生時代の過ごし方っていうこと?
娘: うん。あと、進学とか受験にどう取り組むかとか。
父: 学生の仕事は勉学だよね。
娘: 学校の授業って、世の中の仕事に直接関係ないことが多くない? 連立方程式とか電流と電圧とか塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応の化学式とか、間違いなく社会で使わないよね。なんでこんなことをやらされるんだろうって考える中学生は多いよ。
父: つべこべ言うな。偏差値を高めて、いい大学に行って、いい会社に入って、安定したお給料をもらうためだ……って答えたら、サオリはどう感じる?
creativecommons photo世の中の仕事に関係ないことを、なぜ学校では勉強しなくてはならないの?(Photo Credit: Gueоrgui via Compfight cc)
娘: いい会社って何よ? 有名で大きければどこでもいいの? 発想がすごく消極的だし、ぜんぜん仕事のことしゃべってない。
父: もちろん冗談だ。学校で覚えたこと、歴史の年号とか数学の公式なんて全て忘れてしまっていい。教養として身につけていることはプラスではあるが、大人になって直接役立つことはほとんどない。
娘: 必死に覚えたことを忘れてしまって、何が残るの?
父: 忘れた後に残るのが、本当のお前じゃないの?

問題解決能力で人の価値が決まる

父: 答えの一つ一つは忘れたって、問題を解決する能力は失われない。
娘: 問題を解決する能力?
父: 「問題を解決する力=価値」だ。サオリの価値は、サオリがどんな問題を解決できるかで決まる。少なくとも、世間からはそのモノサシで評価される。
娘: だから、いろんな科目の勉強をするの?
父: 勉強=筋トレ、科目は鍛える部位だよ。数学は腕の筋肉、国語は腹筋、理科は足腰、道徳は心肺機能……みたいな。
娘: ひとつ持ち上がったら、もっと重い鉄アレイで鍛えていくんだよね?
父: そうやって考える能力を鍛えていくわけ。学生時代にやるべきことは、「問題解決能力の素地を養う」に尽きると思うよ。
娘: 問題ってどう見つけて、解決していけばいいのかな……。
父: シンプルに考えてごらん。手当たり次第に人に話をきかせてもらうだけでもいい。「どんなことに困ってますか?」、「日常生活でイライラすることはなんですか?」、「こうなったらもっと快適だなって思うことは何ですか?」って聞いて、「じゃあ、こうしたらどうでしょう?」ってアイデアを提示してあげるんだ。
娘: その程度でいいのか。そう考えたら、問題ってそこらじゅうに存在するね。
父: 世の中って、問題だらけだと思わない? 学校でも会社でも政治でも、問題が山積みじゃん。
娘: どこそこで犯罪がありました、事故がありました、裁判が始まろうとしています……とか?
父: 不祥事が起きました、交渉が失敗しました、事業が終了します、借金が残りました……とか。
娘: 明るいニュースなんて、ほとんどないよね。
父: 大人が必死に問題解決に取り組んでもこのザマだってことだ。お前が大人になったとき、心配しなくても解決すべき問題はいっぱい残っている(笑)。
娘: だろうね(笑)。

問題解決能力が未熟なまま成人してしまうことを恐れろ

父: お父さんは、サオリがどの世界に進むかなんて、まったく気にしないよ。
娘: そうなの!? ちょっとくらいは気にかけてよ。
父: 気にするのは、進んだ世界の問題を解決できる能力を備えた人間に成長しているかどうか。
娘: そっか、そっちを心配するってことね。
父: どこに進学してどんな職場に就職できるかなんてことを心配するのではなくて、問題解決能力が未熟なまま成人してしまうことを恐れてほしいね。
娘: 勉強の目的は、将来に問題を解決するための力を身につけるためなんだな。
父: 大人の世界の問題は、学校のテストより難しいよ。先生もいないし、教科書もない。参考書もなく、模範解答すら存在しない。そんな状況に直面する前に、答えのある試験問題をたっぷりこなして、準備運動をしておいてくれ(笑)。
娘: そう考えると、毎日の授業や部活の人間関係、面倒くさいこと、嫌なこと、すべて意味があるって思えるよ……。あたしは来年受験生で勉強がますます忙しくなるし、部活では後輩を引っぱる立場でもあっていろいろ大変になるから、この話をしておいてよかった。進路のことで、少し悩んでいたところだったし……。
父: なら、よかった。
娘: 勉強をがんばるべき理由がよく分かったよ。
父: 最後に、お父さんからサオリにTED動画のプレゼント。今年の7月に北海道で開催されたTED Sapporoで植松努(うえまつ つとむ)って方が話された講演だ。今回のマジトークを終えた今なら、よく理解できると思うから見てみよう。

「Hoping invites」TED Sapporo(植松努)
※分かりやすい言葉づかいなので、小学校高学年でも理解できる内容です。親子で観ることをお勧めします。

まとめ

中学2年生の娘と43歳の父との仕事についてのマジトーク、いかがでしたか?
来年から中学3年生になり、進路選択が現実味を帯びてくるこの時期に「(将来を含めた)働くってこういうこと」というテーマで話せたことを、娘は「すごくためになった。いいタイミングだった」と感謝してくれました。
朝の6時から8時半までガストで話したのですが、部活の時間になったので、いったんタイムアップ。「まだ話し足りない」とせがむ娘をその日の晩にもう一度連れ出し、コメダ珈琲で延長戦(2時間)をしたので、合計4時間半も話すことになりました。もちろん、TED動画もいっしょに観ました。娘は深く感銘を受けていました。
忙しい日常ではなかなか腰を据えて話し合う時間が見つけにくいものですが、年末年始であれば日頃の喧騒を忘れ、落ち着いて話せる時間が持てると思います。クリスマスの食卓や帰省した実家などで、お子さんと「働くこと」について話し合ってみてはいかがでしょう。お父さんの仕事が何なのか、お子さんはまったく知らないかも知れませんよ。





[父と娘の週末トーク]