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2013年6月14日金曜日

Volkswagen Golf 7|フォルクスワーゲン ゴルフ 7

ジョルジェット・ジ ウジアーロ×ワルター・デ・シルヴァ×和田智
ゴルフのデザイン



ワルター デ シルヴァ(左)とジョルジェット ジウジアーロ(右)
ワルター デ シルヴァ(左)とジョルジェット ジウジアーロ(右)
ゴルフのデザインを解説するワルター デ シルヴァ
ゴルフのデザインを解説するワルター デ シルヴァ
Giorgetto Giugiaro, Walter Maria de’Silva & Satoshi Wadaジョルジェット ジウジアーロ、ワルター マリア デ・シルヴァ、和田智
Giorgetto Giugiaro, Walter Maria de’Silva & Satoshi Wadaジョルジェット ジウジアーロ、ワルター マリア デ・シルヴァ、和田智
Giorgetto Giugiaro|ジョルジェット・ジウジアーロ
Walter Maria de Silva|ワルター マリア デ・シルヴァ
初代ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
初代ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
初代ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
2代目ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
3代目ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
4代目ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
5代目ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
6代目ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
7代目ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
7代目ゴルフ Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
フォルクスワーゲン グループの共有プラットフォーム「MQB」
Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ
Lamborghini Egoista|ランボルギーニ エゴイスタ ゴルフとは対極にあるデ・シルヴァによる最新の仕事のひとつ
Lamborghini Egoista|ランボルギーニ エゴイスタ ランボルギーニ「エゴイスタ」は生産モデルとはちがう自由な発想でデザインされたコンセプトモデル。
Lamborghini Egoista|ランボルギーニ エゴイスタ 一人乗りというのもまた、エゴイスティックだ

エバーグリーン、と も評される「ゴルフ」のスタイリング。フォルクスワーゲンのデザイナーは、なにを考え、新型ゴルフを送り出したのか。2013年5月20日に、東京 都体育館のアリーナを使っておこなわれた発表会場から、デザイナーの鼎談をお送りする。



ゴルフのモデルチェンジとは?

和田智(敬称略・以下和田) 新型ゴルフの発 表会に呼んでいただいて光栄です。僕は、アウディ デザインに籍を置き、「A5」、「A7」を手がけたとき、デ・シルバさんと一緒に仕事をさせてもらいました。ここでは、新型ゴルフのデザインにまつわる話 を聞かせてください。

ワルター マリア デ・シルバ(同・デ・シルバ) 今日は東京に来られて嬉しくおもいます。新型ゴル フは欧州のカー オブ ザ イヤーを受賞しました。私たちにとって、ゴルフの開発はたいへん重要です。なにしろ(フォルクスワーゲンの本社がある)ウォルフスブルグで40年にわたり 2,900万台がつくられてきたのですから。ゴルフの進化とは、繰り返さないように繰り返していくむずかしさを伴います。

ジョルジェット ジウジアーロ(同 ジウジアーロ) 私の子どもが私に似ているように、クルマでも受け継がれていくものがあります。ゴルフでもおなじだとおもいます。ゴルフとして継承されて いくべきものがあります。



デ・シルバ フォルムやディテールがまったく変わっ てしまうと、もはや継続性における論理はなくなってしまいます。多くのクルマはあたらしさを念頭に、変化していきますが、ゴルフはことなります。

水平ラインを基調に、太いCピラーと美しいボディパネルなど、ゴルフをゴルフたらしめている特徴を大事にしていま す。


和田 ジウジアーロさんが、初代をデザインしたとき、大切にした要素はな んでしょうか。

ジウジアーロ 1970年代でしたね。フォルクスワーゲンがビートルに代わるモデルを考えなくてはい けない時期でした。彼らが求めていたのは、量産でき、価格がそれなりに低く経済性も高い、というモデルでした。私はそれを念頭にデザインしました。


デ・シルバ クルマがモデルチェンジをつづけていくなかで、技術発展や操縦 性の向上など、アップデートする要素はいろいろありますが、VWは文化的側面をなによりも大事にしてきたとおもいます。VWが重要だと考えているのは、ク ルマの民主化。つまりいいクルマを安く供給 することです。

ジウジアーロ 私が考える本当のデザイナーとは、クルマの核をきちんととらえて、企業の立場にも立て る人間です。初代ゴルフが評価されたのはなぜかと考えると、けっして、ルックスだけではないでしょう。アーキテクチャー、つまり、エンジンを含めたパッ ケージと価格が成功の要因だったのではないかと。ならば、モデルチェンジのときにも、そこを放棄してはいけません。



1ミリの美

和田 自動車のデザインというと、審美的な価値と、機能美と、そ れにコストと、さまざまな要素が複雑にからんできます。とはいっても、一般的にはルックスはとても重要だし、それが商品力につながります。

デ・シルバ 私にとって美とは、いってみれば世界をよくするものだとおもいます。ではクルマにおける 美とはなにか、というと、正しいプロポーションがもっとも大事ではないでしょうか。サトシ(注:和田のこと)がアウディにいたときは、いつもミリメートル のごくごく微少な領域で議論をしていました。このキャラクターラインをあと0.5ミリ下げろとか。

和田 そうすると、びっくりするほどデザインがよく なるんです。

デ・シルバ 本当の美とは細かなところから生まれてくるべきものなのです。

ジウジアーロ そうです。1ミリの単位で美は生まれるのです。デザイナーはそこに意識的であってほし いです。無頓着だと、視覚の汚染としかいいようがない建物などが生まれて、町の景観がめちゃくちゃになってしまいます。

 和 田 クルマをデザインしていくうえで、大事にしているものはなんですか。

デ・シルバ クルマ いがいでも、カメラだってイスだって、美しくなくてはいけませんが、もうひとつ、適正なコストで販売されなくてはいけません。デザイナーはつねに、この2 つを意識する必要があります。

ジウジアーロ 私たちはエゴイストで、自分がかわいくて、存在感を主張したいですから、つねにひとと ちがったものをつくりたいという気持ちがあります。しかし、機能性に軸足を置き、自分のやりたいことを軌道修正するのも、プロとしては大事です。デザイン がマーケットに理解されて売れる。そうでなければ、デザイナーの存在価値がありません。自分だけがいいとおもっているのでは不十分で、ユーザーの理解を得 られる商品をデザ インしなくてはならないのです。



ゴルフだけがゴルフを受け継いでいる

和田 商品には生命があると言いますね。

デ・シルバ 私は、自動車デザイナーに必要なものは倫理だとおもっています。適切な倫理観をもちなが ら仕事をすればいいものができます。トレンドなどに気をとられる必要もない。クルマは、巨額の投資をして開発され、6、7年は売れつづけないといけませ ん。わずか数カ月でみんなの興味がなくなるようなものをつくるのは間違っています。

ジウジアーロ 私 がデザインにおいて心がけているのは、ていねいに、細かく、かつおおげさに主張せず、偽物っぽくならないように、ということです。音楽にたとえれば平均律 のようなものが、クルマのデザインの世界にもあるのです。それを大切にすることが、ゴルフのようにずっと愛されるデザインを生むきっかけをつくってくれる のではないでしょうか。

Giorgetto Giugiaro|ジョルジェット・ジウジアーロ
Walter Maria de Silva|ワルター マリア デ・シルヴァ

デ・シルバ ゴルフでいうと、機能性とエモーショナルな要素をいかに結びつ けるのが重要とおもっています。ゴルフにエ モーショナルな要素は少ないというひともいますが、「GTI」もあります。ゴルフ特有のシンプルなラインでデザインされているに もかかわらず、充分エモーショナルでしょう。

ジウジアーロ 初代ゴルフのとき、おなじようなプロポーションのクルマはありませんでした。それでイ ンパクトは強烈でした。しかも誰がみてもわかりやすいアイデンティティがありました。

ここにいたるまでに、ライバル 会社がおなじようなモデルをつくりましたが、つづけているところはありません。ゴルフだけがゴルフを受け継いでいます。そのスタイルは、シンプルすぎると いう批評もありますが、洋服とおなじかもしれません。日本でも欧州でもおなじデザイナーの服を売っていますが、着ているひとたちは明らかに雰囲気がちが う。行動様式がちがうからです。

デシルバ やや繰り返しになりますが、あたらしいゴルフでもディテールの煮詰めがなにより大事だと肝 に銘じて、私たちはデザインをしました。10分の1ミリまでラインにこだわりました。



デザインを変えることは難しいことではない

和田 イタルデザイン ジウジアーロは、2010年からフォルクスワーゲン グループに入りましたね。

デ・シルバ 大きな力になってもらっています。でもマエストロ(巨匠=ジウジアーロのこと)と仕事を するのは大変ですよ(笑)。誰もマエストロのボスにはなれないから。

ジウジアーロ そうですか(笑)。フォルクスワーゲンのデザインにとって、ミスター デ・シルバが要職にあることは、とても大きなプラスになっています。デザインの質やプロポーションの決定にあたって、彼のような目利きが判断を下すことが とても重要なのです。さまざまな提案が出てくるなかで、しっかりとした基準をもっているひとがトップにいるのが重要なのです。

デ・シルバ 15年前に私がフォルクスワーゲン グループに採用される際、マエストロが大きな助言をしてくれたのを感謝しています。

和田 ところで、新型ゴルフのデザインは、どのよう に決定しましたか?

デ・シルバ 歴代モデルとの共通点は、Cピラーですね。ゴルフの特徴です。大きなちがいは、技術で す。たとえばガラスですが、以前ではできなかったぐらい大きな曲率が可能になりました。

ドアのギャップも3mmなん て、少し前は不可能とおもわれていたことが、ゴルフでは可能になりました。それが現代のデザインです。

ジウジ アーロ 革命的なデザイン変更は、じつはむずかしいことではありません。でも、消費者の好みに合わなかったら?やはりゴルフのようなモデルでは、 コントロールされた進化が必要なのです。

デ・シルバ ゴルフはスタイリング志向というよりプロダクト志向です。ゴルフにおける美とは機能のこ となのです。
かつ、新型ゴルフの特徴として、MQBというエンジン横置きのプ ラットフォームを使っていますが、20年前、フォルクスワーゲン グループでは傘下のブランドがすべてことなったプラットフォームを用いていました。

それが現在では、ひとつのプラットフォームで、VW、アウディ、セアト、シュコダという4つのブランド、そして29 におよぶモデルをカバーしています。私がそのなかでゴルフだけ強い差別化をしようとすれば、上司はいい顔をしないでしょう。

ジ ウジアーロ いまは社会情勢や経済が不安定であまり浮かれていられないし、いっぽう自動車では安全基準や燃費のハードルがますます高くなっていま す。そこで成功するには強い組織力が必要だし、また高い知性や経験値が求められます。フォルクスワーゲンの優位性が発揮される時代だとおもいます。

ゴルフはそんな時代の要求に応えるものを備えています。安全性でも燃費でもレベルが高いし、ディテールやクオリティ が完璧である、緻密なデザインです。それらが日本人の好みにぴったり合うとおもいます。




Walter Maria de’Silva|ワルター マリア デ・シルヴァ
フォルクスワーゲン グループのデザインを統括。1951年、イタリア生まれ。デザイナーのキャリアは、72年にフィアットからスタート。77〜86年はイデア、86〜99年 はアルファロメオのデザインスタジオのディレクターを務める。99年にフォルクスワーゲン グループに入り、セアトのデザインディレクター。そのあと、アウディ グループでアウディとランボルギーニのデザインを統括し、2007年から現在の立場に。



Giorgetto Giugiaro|ジョルジェット・ジウジアーロ
1938年、イタリアうまれ。52年に、名車フィアット「600」などを設計したダンテ ジャコーザの助力でフィアットに入社したのがキャリアの出発点。59年、カロッツェリア ベルトーネに移り、66年にカロッツェリア ギアへ、そして67年に自らの会社、イタルデザインを、技術者アルド マントバーニとともに設立。キャリアのなかで、欧日米さまざまなメーカーのためにすぐれたクルマをデザインしてきた。イタルデザインは、設計から生産まで 一貫してメーカーのための仕事ができるので、業績を伸ばした。2010年よりフォルクスワーゲン グループ傘下に入り、イタルデザイン ジウジアーロに。



Satoshi Wada|和田智
(株)SWdesign 代表取締役 CEO。1961年、東京生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒。84年、日産自動車入社、初代セフィーロ、初代プレセア、セフィーロワゴンや電気自 動車ハイパーミニなどを手がける。98年、アウディAG / アウディ デザイン入社。A5、A7、A1など担当。2010年、SWdesign TOKYO 設立(Audi designパートナーシップ)。12年、「ISSEY MIYAKE WATCH "W" 」を手がける。




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