フェイスブックが幕を閉じる日が近づいている
新規サービスが続々登場、すでに淘汰の段階に入った
2012.09.18(火)
ソーシャルメディアの中でもフェイスブックの悲観的な将来が各方面で論じられている。筆者は「フェイスブックが消滅する日」(月刊文藝春秋)という記事で、「巨人」の衰退論を展開した。もちろん仮説だが、それを裏づけるいくつもの徴候はすでに表出していた。
1年前から熱が冷めていた米国
その1つは、米国内に限ってのことだが昨年の夏頃から、「フェイスブックのピークは過ぎた」という言説が出回っていた。今年1月から4月までの1カ月平均の利用者数は、昨年下半期の平均と比較してすでに減少し、「熱が冷めた」との意見もある。
そして米国で取材を続けると、フェイスブックに対する悲観論を口にする人は1人や2人ではなかった。
「パーティーは終わった」という表現を使う人もいる。米国以外の各国では依然として利用者数は増え続けているが、本家ではすでに「飽きた」という声が多数聞かれた。
2つめは投資銀行アイアンファイア・キャピタルの創業者エリック・ジャクソン氏の消滅論だった。
あと5~8年で消滅する
「フェイスブックは今後5年から8年で完全に消滅すると思う。それはIT業界の流転の速さによるもので、フェイスブックは完全に飲み込まれる」IT業界に通じた氏は、業界の将来を見据えるだけでなく、売り上げの8割を広告に頼るインターネットサービス企業という特質に弱点があるとみる。
「フェイスブックはアップルのようなハードウエア企業ではありません。さらに次世代はモバイルが主流になる運命にあります。モバイル専用のプラッ トフォームによって一般のパソコンでは動かないアプリが業界を席巻してきます。フェイスブックがモバイル専用の広告掲載を始めたのは今年6月からで、すで に出遅れています」
フェイスブックやリンクトインといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は次世代のモバイル中心の波に飲まれると予測するのだ。
3つめは今年5月、ワシントン・ポスト紙に出た風刺画だった。図柄では、モバイルを手にした若者たちが画面を見ながら一列に歩いている。前方は崖で、若者たちは画面に夢中になっていて気がつかない。そのため1人ずつ崖から落下していく。
そして「ダーウィニズム(適者生存)がソーシャルメディア(フィイスブック)を喰う」という言葉がついている。フェイスブックは自然淘汰の中で消え去る運命にあることを示唆していた。風刺画ではあるが、そこには前出のジョンソン氏の論点と共通するものがある。
低迷する株価が将来を暗示
4つめは株価の低迷である。5月17日の新規株式公開(IPO)以後、株価の上昇が期待されたが、取引スタート直後こそ1株45ドルに手が届いたものの、9月12日現在、20ドル前後を低迷している。フェイスブックはすでに万単位のアプリを導入し、機能変更やサービスの追加も連日のように行っているが、それは生存に必死という姿でもある。
SNSが興隆する前、ネット上には個人のブログが溢れかえっていた。現在もブログ文化は残るが、ブログの特徴はフェイスブックやツイッターより長い1000字前後の文章である。そこに日々の思いが注入される。
けれどもフェイスブックで記される文字数はそれよりも短い。マイクロブログであるツイッターはさらに短い140字以内だ。
そして今、米国のソーシャルメディアの波は写真へと移行しつつある。「ピンタレスト」が好例で、写真で人に思いを伝える流れができた。
文字から写真へ移行するソーシャルメディアの波
フェイスブックはすぐにその波を察知し、今年4月、スマートフォン向けの写真共有アプリである「インスタグラム」の買収を発表。8月下旬、米連邦取引委員会(FTC)はその買収案を承認し、フェイスブックは新しい動きを取り込んではいる。「ピンタレスト」も「インスタグラム」も一言で述べるならば「画像のツイッター」と呼べる。
スマートフォン利用者が増えているため、画素数の多い鮮明な画像のやりとりがモバイル上で可能になった。ROIリサーチの世論調査では44%の回答者が、今後は画像のやりとりが増えていくと述べている。
大手広告代理店グローバルフォーのデタヴィオ・サミュエル氏が説明する。
「画像というのは1枚でも実に多くの情報を伝えられます。短い伝達の形と言ってもいいでしょう。時間に追われ、情報を送る方も受け取る方も、より短い時間で情報を伝達したいと考えると、必然的に画像に落ち着くのです」
自分の暗部を見せない特徴が裏目に?
ただフェイスブックや画像の発信内容を吟味すると、多くの場合、「この写真を見て下さい」という自己顕示欲の断片が幾層にも重なった姿にたどり着く。SNSの特質でもあるが、自分の暗部を積極的に見せることはない。そうなると、フェイスブックが到達する点は虚像なのではないかとの思いが強まる。筆者はフェイスブックを始めて3年以上が経つが、過去1年ほど、ほとんど書き込みをしなくなった理由もそこにある。
一方、何万という企業や組織がフェイスブック上にホームページを制作し、ブランディングの確立に力を注いでいる。ブランディングのプロで、「ミレニアム・ブランディング」社の共同経営者、ダン・シュワーベル氏は、その点では悲観論を述べる。
「ツイッターもフェイスブックもすでに1日だけで億単位の書き込みがあるので、ソーシャルメディアを使って企業や組織のブランドを高めようとの努力はもう功を奏していないのが現実です」
「5年前であれば、むしろやり方によっては影響力を行使できました。今はソーシャルメディアでカネ儲けをしようなどと考えない方がいい。多少の売り上げはあるでしょうが甘くはないです。ずっとネット業界を見てきていますが、成功者と呼べる人たちはごく僅かでしかない」
人間の成長より速いIT技術の進化
もちろん億単位の利用者がソーシャルメディアを使用している現実は、それだけ信頼度が高いことをも意味するが、それが必ずしも思うようにいくわけではないのだ。インターネットのデジタルアナリスト、ブライアン・ソリス氏もソーシャルメディアの将来は決して明るくはないとの考えだ。
「ソーシャルメディアの世界において、目的はすでに達成されたという認識があります。その後はデジタルダーウィニズム(デジタル界での自然淘汰)が必然になるかもしれません。その理由はIT技術の進化が人間の成長よりも速いからです」
まだ成長途上で天井が見えないと考えるSNSファンも数多いが、インターネット企業は今後、業界再編に巻き込まれる可能性の方が高いと考えるべきだろう。
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